古代エジプト建築

古代エジプト 建築

古代エジプト建築は、ナイル川の恵みによって育まれた文明の中で、独自の発展を遂げた建築様式です。その特徴は、巨大な石造りの建造物と、宗教観に基づいた装飾にあります。特に有名なのは、ギザのピラミッドやスフィンクス、カルナック神殿、ルクソール神殿などです。

建材と特徴

古代エジプトでは、乾燥した気候のため森林が発達せず、木材が不足していました。そのため、主な建材として日干しレンガと石が用いられました。石材は主に石灰岩が使用され、砂岩や花崗岩も使われました。初期には石は主に墓や神殿などの宗教的な建造物に用いられ、レンガは王宮、要塞、神殿の境界壁などに使われました。

ピラミッドの中核は、現地で切り出された石やレンガ、砂利で構成され、表面は遠方から運ばれた化粧石で覆われていました。白い石灰岩はトゥーラから、赤い花崗岩は上エジプトから運ばれました。

一般の住宅は日干しレンガで造られていました。ナイル川の泥を型に入れて天日で乾燥させ、建材として使用しました。ナイル川流域の都市は、洪水の被害やレンガが肥料として使われたため、現存するものは少ないですが、乾燥した気候のおかげで一部のレンガ造りの遺跡が保存されています。

古代エジプト建築に対する理解は、主に宗教的な遺跡に基づいています。厚く傾斜した壁は、土壁の堅牢性を得るための建築法が影響していると考えられます。また、石造りの建物の表面装飾は、土壁装飾から着想を得たものと考えられます。アーチ構造は第4王朝で発達しましたが、記念碑的な建築物には、まぐさ石構造が用いられました。これは、巨大な石のブロックを支柱で支える構造です。

建物内部は、柱や壁にヒエログリフやフレスコ画、彫刻が施され、様々なモチーフが用いられました。スカラベ、光球、ハゲワシ、ヤシの葉、パピルス、スイレンなどが代表的です。これらの装飾は、歴史的な出来事や呪文を記録するだけでなく、装飾的な意味も持っていました。また、古代エジプト人の生活、身分、戦争、信仰を知るための重要な情報源となっています。

ギザのピラミッド群

ギザの共同墓地は、カイロ郊外のギザ台地にあります。この場所には、大ピラミッド、カフラー王のピラミッド、メンカウラー王のピラミッド、王妃のピラミッド、スフィンクスなどが存在します。

第4王朝時代に建てられたピラミッドは、王への信仰と権威を示すためのものでした。ピラミッドは墓所としての役割だけでなく、ファラオの名前を後世に伝えるためのモニュメントでもありました。その大きさは、当時の高い工学技術を示しています。

ギザの大ピラミッドは、最も古く巨大なピラミッドであり、世界の七不思議の一つです。カフラー王のピラミッドは、先祖のピラミッドよりも高い場所に基礎を置くことで、より大きく見えるように工夫されています。また、カフラー王は墓所の守護者として、スフィンクスを造らせました。

ピラミッド内部は、一般的に考えられているような複雑な構造ではなく、通路は単純で石室に直接通じています。内部の財宝を求めて、盗掘が頻繁に行われました。ピラミッド建設は、当初は奴隷労働によって行われたと考えられていましたが、農閑期の農民も多く動員されたという説もあります。

カルナック神殿とルクソール神殿

カルナック神殿は、ルクソールから北に約2.5km離れたナイル川岸にあります。アメン大神殿、モントゥの神域、ムトの神域、アメンホテプ4世の神殿（破壊）の4つの部分で構成され、壁の外には小さな神殿や聖域、スフィンクスの通りがあります。カルナック神殿は、約30人のファラオによって長期間にわたり建設され、その規模と複雑さは他の神殿を圧倒します。

ルクソール神殿は、ナイル川東岸のルクソール市街にあります。アメンホテプ3世の時代に建設が始まり、多くのファラオによって拡張されました。特にラムセス2世の時代には、大規模な拡張工事が行われ、高さ23mの最初の塔門が建設されました。塔門にはラムセスの軍事的功績が刻まれ、神殿の正門には巨大なラムセスの彫像が立ち並びます。また、ピンクの花崗岩でできたオベリスクも有名です。

ルクソール神殿の中庭には、パピルス柱頭の柱が並ぶ廊下が続き、壁面にはヌト祭の場面が描かれています。この神殿は、当時の宗教観や芸術性を知る上で、重要な遺跡となっています。

これらの建築物は、古代エジプト文明の技術力、宗教観、そして文化を今に伝える貴重な遺産です。

脚注

[1] Dieter Arnold (2005). Byron Esely Shafer. ed. Temples of Ancient Egypt. I.B.Tauris. ISBN 9781850439455
[2] R. G. Blakemore (1996). History of Interior Design and Furniture: From Ancient Egypt to Nineteenth-Century Europe. John Wiley and Sons. ISBN 978-0471286769
[3] Lawrence Cunningham; John J. Reich (2010). Culture and values: a survey of the humanities (7th ed. ed.). Boston, MA: Wadsworth Cengage Learning. ISBN 0-495-56877-5

参考文献

Arnold, Dieter. The encyclopedia of ancient Egyptian architecture. Cairo: American University in Cairo Press, 2003.
Fletcher, Banister; Cruickshank, Dan, Sir Banister Fletcher's a History of Architecture, Architectural Press, 20th edition, 1996 (first published 1896). ISBN 0-7506-2267-9. Cf. Part One, Chapter 3.
Hill, Marsha (2007). Gifts for the gods: images from Egyptian temples. New York: The Metropolitan Museum of Art. ISBN 9781588392312

外部リンク

AEgArOn - Ancient Egyptian Architecture Online, open source project
Ancient Egyptian Architecture - Aldokkan
Ancient Egypt Houses

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