古典派の公準

古典派の公準

古典派の公準とは、経済学者ケインズが彼の著作『雇用・利子および貨幣の一般理論』において提唱した経済的な命題です。特に第1編第2章では、古典派及び新古典派経済学の雇用理論を中心に、その概要が示されています。ケインズは、マーシャルやピグーといった新古典派の学者を含めて、これらの理論を「古典派経済学」という広義のカテゴリーに位置づけています。

古典派の第1公準

この公準の主要な主張は、企業が利潤を最大化する際、実質賃金が労働の限界生産物に等しいというものです。具体的には、企業が雇用量を決定する際に、労働の限界生産物と実質賃金が一致する点まで雇用を増やすというメカニズムがあります。利潤は次のように表現されます:

利潤 = (生産物価格 × 生産量) - (名目賃金 × 雇用量)

ここで、実質賃金は名目賃金を生産物価格で割った値で表示され、労働の限界生産物は生産量の増加を雇用量の増加で割ったものです。例えば、名目賃金が10、そして生産物価格が2であれば、実質賃金は5となります。この仮定の下で雇用量を1増やすことで、生産量が10増加し、結果的に利潤が10増加します。労働の限界生産物が実質賃金と一致するまで、この過程は続きます。この第1公準からは労働需要曲線が派生します。

古典派の第2公準

次に、第2公準では、労働者の余剰効用が最大化される際に、一定の労働量に対する実質賃金の限界効用が、その雇用量に対する限界不効用と等しくなることが示されています。これは、労働供給量が労働の限界不効用と実質賃金の限界効用が一致するように決定されることを意味し、ここからは労働供給曲線が導出されます。

古典派の立場

古典派経済学の視点では、実質賃金率が柔軟に変動すれば、摩擦的失業や希望賃金の高止まりによる自発的失業を除けば、失業は生じないとされています。ケインズによれば、古典派の理論が維持される限り、完全雇用を達成するための対策は以下の通りです。

• - 労働生産性を向上させ、物価を引き下げ実質賃金を高める。
• - 非賃金商品の価格を引き上げ、労働需要をシフトさせる。
• - 労働の非効用を軽減し、労働供給を増加させる。
• - 職業安定所や職業訓練所の機能強化で摩擦的失業を減少させる。

ケインズの異議

ケインズは、労働者が実質賃金率の変動に基づいて労働供給量を決定することはないと主張しています。彼は古典派の第2公準に疑問を呈し、非自発的失業が生じる原因は生産物に対する有効需要の変動に起因すると指摘しました。このテーマに関する詳細は、彼の作品の第19章「貨幣賃金の変動」に詳述されています。

参考文献

この理論に関連する文献として、特に美濃口武雄の「ケインズ「有効需要の原理」再考」（一橋論叢1999年12月）などが挙げられます。

もう一度検索