有効需要

有効需要

有効需要とは、経済活動において実際に貨幣的支出が伴った需要を指します。単なる欲望ではなく、実際に物を購入する能力を持つ需要であり、この「有効」という言葉は、貨幣支出に基づくものであることを強調しています。

ケインズ理論における有効需要の位置づけ

経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、その「一般理論」において、雇用量は総需要曲線と総供給曲線が交差する点で決まり、この交点を有効需要と名付けました。これにより、企業の利潤が最大化されることが示されています。マクロ経済の観点からは、有効需要は消費、投資、政府支出、及び純輸出の合計で表現され、通常「総需要」と同義とされています。この関係は式Y=C+I+G+X-Mで表され、これは全体的な産出物の需要を示しています。

ただし、経済が完全雇用の状態にない場合、必要な雇用が存在しないことから非自発的失業が発生します。古典派経済学は、全体的な産出量が非自発的失業を伴わない水準まで達することを前提としていました。

セイの法則との対比

歴史的には、セイの法則が古典派経済学の中心に位置しており、「供給は自ら需要を生み出す」と主張しています。この理論によれば、供給の調整が需要を生むとされていました。しかし、ケインズはこの考えを批判し、特に貯蓄の増加が投資の減少につながる状況を指摘しました。古典派の理論が示す均衡は必ずしも実現しないとし、金融政策や財政政策による介入の必要性を訴えました。

有効需要原理

有効需要の原理は経済全体の水準を決定する基本的なメカニズムであり、国民所得や雇用量が有効需要によって影響を受けることを示しています。非自発的失業は、労働需要が労働供給を下回る際に起こるため、結局は有効需要の不足を反映しています。

経済政策としての対応

経済政策においては、有効需要を調整するための「総需要管理政策」が重要です。これには、財政政策と金融政策が含まれ、これらを組み合わせた政策のことをポリシーミックスと呼びます。

財政政策

財政政策は、公共事業の実施や減税を通じて有効需要を喚起し、完全雇用GDPを達成することを目指します。乗数効果によって、政府支出の増加がGDPを大きく押し上げる可能性があります。しかし、政治的に不人気な財政政策も多いため、実現は容易ではありません。

金融政策

金融政策では金利を調整することで民間投資を促進しますが、景気の悪化時には期待利潤が低くなり、金融政策の効果が薄れることがあります。さらに、グローバリゼーションの影響もあり、金利の調整が国内における貯蓄と投資の均衡に及ぼす効果が変化してきています。

経済学における批判

ケインズ自身、公共投資を単なる水として期待せず、総需要の管理を万能薬と考えてはいませんでした。一部の経済学者は、総需要管理政策の有効性について疑念を抱き、特に経済問題が自己修復機能を持たない場合、政府の介入が必須であるとしています。

顕在需要と潜在需要の概念

マーケティングの視点からは、顕在需要が具体的な購買行動に結びつく需要を指し、反対に潜在需要は条件が整えば発生する可能性のある需要を指します。市場調査での回答と実際の購入行動の不一致は、この潜在需要の特性を考慮したものであり、様々な政策決定において重要な要素となります。

このように、有効需要はマクロ経済学の中心的な概念であり、経済政策の根本に関与し続けています。

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