古画備考

古画備考

『古画備考』は、江戸時代末期の狩野派の絵師、朝岡興禎によって編纂された画人伝です。嘉永3年（1850年）に起筆され、全51巻にも及ぶ大部な著作であり、近世日本絵画史研究における重要な基礎資料の一つとされています。

朝岡興禎は、狩野栄信の次男であり、自身もまた絵師でした。『古画備考』は、狩野永納の『本朝画史』、堀直格の『扶桑名画伝』と並び、近世の代表的な画人伝として知られています。

内容

『古画備考』の特徴として、以下の点が挙げられます。

詳細な記述: 各画人について、流祖からの系図を示し、その人物の出自、師弟関係、画風、逸話などを詳細に記述しています。
典拠の明示: 各記述において、『江談抄』、『蔭涼軒日録』、『本朝画史』、『拾彙』、『本朝高僧伝』など、引用した資料の典拠を明示しています。これにより、記述の信頼性を高めています。
略画と画印: 多くの画人について、その略画と画印を記載しています。これにより、画風や個性を視覚的に理解することができます。

『古画備考』は、日本関連の項目が3,179件、巻50-51の朝鮮画関連が196件収録されています。

内容は多岐にわたり、帝室、廷臣、武家、釈門（僧侶）、詩歌、連俳、茶香、名画、近世の画家、浮世絵師、巨勢家、宅磨、住吉、芝、粟田口、土佐家、光悦流、狩野派一門、英派、宮殿筆者、合作、作者不詳の絵師、倭絵、長崎の画家、朝鮮の画家などが含まれます。

以下に各巻の内容を示します。

巻1：「帝室」
巻2-3：「廷臣」
巻4-5：「柳栄、武家」
巻6：「武家」
巻7-11：「釈門」
巻12：「詩歌、連俳、茶香、雑」
巻13-28：「名画」
巻29-30：「近世」
巻31：「浮世絵師伝」
巻32：「巨勢家、宅磨、住吉、芝、粟田口」
巻33：「土佐家」
巻34：「住吉家」
巻35：「光悦流」
巻36-39：「狩野譜」
巻40-43：「狩野門人譜」
巻44：「英流」
巻45：「宮殿筆者」
巻46：「合作類及不詳印」
巻47-48：「倭絵」
巻49：「長崎画人伝」
巻50-51：「朝鮮画画伝」

後世への影響

『古画備考』は、明治36年（1903年）に太田謹によって増訂版が出版され、より多くの人々に利用されるようになりました。また、辻惟雄、中島純司によって五十音別索引が編纂され、研究者にとってさらに使いやすい資料となっています。

『古画備考』は、その詳細な記述と豊富な情報量によって、日本絵画史研究に大きく貢献しており、今日においても重要な資料として参照されています。

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