朝岡興禎

朝岡興禎（あさおか おきさだ）

概要

朝岡興禎は、江戸時代後期に活躍した旗本であり、画家、美術史家としても名を馳せた人物です。狩野派（江戸狩野）の一員であり、木挽町狩野家に生まれました。特に美術書『古画備考』の著者として知られており、彼の作品は現在も多くの美術館にて評価されています。

生涯

生い立ち

1800年、寛政12年に江戸木挽町にて狩野栄信の次男として生まれました。幼名は三之助とされ、のちに三十郎と称しました。文政2年には兄と父と共に多摩川の地形調査を行い、その成果として「江戸名所真景」を制作しました。文政3年には旗本・朝岡興邦の養子となり、三次郎興禎と名乗りました。

家斉出仕

1830年には小納戸に任命され、その後すぐに日々の公務に従事し始めました。彼は徳川家斉の身近で様々な雑務を担当し、天保9年には江戸城にて多くの絵を描くなど、その才能を発揮しました。また、天保4年頃には二の丸の松平斉善の居間に松竹梅などの作品を手掛けました。

家慶出仕

家斉の死去後、家慶に仕官し、さまざまな絵画を制作しました。天保14年には兄や家慶と共に日光社参に随行し、天保15年には本丸が焼失する事態が起き、再建の際に新たな絵を手がけることとなります。

作品と著書

朝岡興禎は多くの作品を残しましたが、その中でも特に「春秋農村図屏風」が注目されています。また、彼の著書『古画備考』は美術研究において重要な資料とされています。他にも、「長崎画系」という作品が『日本画論大観』中巻に収録されており、これらの書籍や作品は後世に大きな影響を与えました。

人物像

興禎は非常に才能豊かな絵師としての教育を受けましたが、しばしば自身の能力に限界を感じていたようです。そのため、兄や他の絵師の補佐や鑑定といった役割を重視しました。彼は読書を好み、模写を得意としていました。また、非常に寡黙な性格であったと言われていますが、大酒を嗜む一面も持っていました。

家族

父は狩野栄信、母は松尾多宮直常の娘。兄は狩野養信で、姉は三好長十郎の妻でした。彼自身は子供を持ち、子息たちは幕末にかけてその名を残しました。

最期

一生を通じて美術に情熱を注いだ興禎は、1856年に亡くなりました。彼の仏号は白峰院幽水三楽居士で、四谷全勝寺に葬られましたが、その後その場は荒廃し、現在は確認できない状態となっています。彼の影響は今もなお多くの人々に受け継がれています。

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