可敦城

可敦城（ハトゥンじょう）

可敦城は、現在のモンゴル国、トール川のほとりに位置する歴史的な古城址です。この地は、中央アジアの遊牧民族の興亡を物語る、重要な場所として知られています。

ウイグル国時代の皇女の居城

8世紀、ウイグル国（744年 - 840年）の時代に、可敦城はその歴史の舞台に登場します。当時、ウイグル国のカガン（可汗：君主号）に嫁いだ唐の皇女（和蕃公主）のために、この城が築かれました。「可敦（ハトゥン）」とは、古代トルコ語で「皇妃」を意味する言葉であり、城の名前は、この皇女に由来すると考えられています。

遼の統治拠点

その後、契丹が外モンゴルを征服すると、1004年に可敦城は新たな役割を担うことになります。契丹はここに鎮州建安軍を置き、この地を遼が同地域を統治するための中心拠点としました。可敦城は、遼にとって北方の支配を確立するための重要な足がかりとなったのです。

西遼の建国

12世紀に入り、遼が金によって滅ぼされると、遼の皇族であった耶律大石が可敦城に注目しました。1122年、耶律大石はここに7州18部の衆を集め、皇帝として即位し、西遼（カラ・キタイ）を建国しました。可敦城は、西遼の建国という歴史的な出来事の舞台となったのです。

隊商貿易の中心地としての繁栄

13世紀初頭、モンゴルのチンギス・ハンが台頭するまで、トール川渓谷にはケレイト部族が遊牧していました。このケレイト部族が繁栄を誇った背景には、可敦城に置かれた鎮州建安軍が隊商貿易の中心地として機能していたことが挙げられます。可敦城は、東西の文化や物資が交流する重要な拠点として、経済的な繁栄をもたらしました。

可敦城は、ウイグル国の皇女の居城、遼の統治拠点、西遼の建国地、そして隊商貿易の中心地として、さまざまな役割を果たしてきました。その歴史は、中央アジアの遊牧民族の興亡と、東西の交流の歴史を色濃く反映しています。

もう一度検索