台湾神宮

台湾神宮の歴史

台湾神宮は、かつて台湾の台北市に存在した神社です。その起源は、日清戦争後の下関条約によって台湾が日本に割譲されたことに遡ります。1895年から1945年までの約50年間、台湾は日本の統治下に置かれました。

台湾征討の際、近衛師団長として出征した北白川宮能久親王が1895年に台南で戦病死しました。これは皇族軍人として初の外地での殉職でした。この出来事をきっかけに、台湾に神社を建設する動きが起こり、1896年には貴族院と衆議院で神社建設の建議が可決されました。

1897年、乃木希典前台湾総督は「故北白川宮殿下神殿建設取調委員会」を設立し、委員を任命しました。委員会は、台北、基隆、台南の地を検討した結果、基隆河対岸の剣潭山に建設地を決定しました。1899年に土木工事が開始され、1900年には社殿の建築工事が始まりました。1901年10月20日に竣工を迎えました。

1900年7月14日、第4代台湾総督児玉源太郎男爵は、開拓三神と能久親王を祀る「臺灣神社」として官幣大社に列することを申請し、同年9月18日、内務省は台湾神社創健を認めました。神社の建設には、木曽産のヒノキをはじめ、尾張、紀伊、大和、土佐のヒノキ材が用いられました。また、神社へ渡る鉄橋「明治橋」も建設されました。

1901年10月27日、官幣大社「台湾神社」の鎮座式が執り行われ、能久親王の未亡人である北白川宮大妃富子や多くの関係者、名士が参列しました。翌28日には、児玉総督を奉幣使として大祭が執行され、一般市民も参拝に訪れました。

1944年6月17日、天照大神が増祀され、「台湾神宮」と改称されました。しかし、同年10月23日、円山の山頂に旅客機が墜落し、新社殿などが焼失しました。1945年の日本の敗戦後、台湾にあるすべての神社は廃止され、台湾神宮の跡地は後に圓山大飯店となりました。

祭神

台湾神宮の祭神は、1944年以降、以下の3座5柱でした。

天照大神
開拓三神
大国魂命
大己貴命
少彦名命
北白川宮能久親王

境内の様子

境内は10万坪を超える広さで、多くの燈籠や花崗岩の大鳥居が設置されていました。

台湾における影響

台湾神宮は、台湾の総鎮守として、台湾で最も重要な神社とされました。台湾総督府は10月28日を「台湾神社祭」と定め、この日を全島の休日としました。また、台湾銀行の紙幣には、台湾神宮が描かれていました。

神社入り口に置かれていた青銅製の牛の像は、現在国立台湾博物館の敷地内に設置されています。

市民生活と神社

台湾神社では、1907年以降、結婚式の統計記録が残っています。内地で広まった神道形式の結婚式が、台湾でも行われるようになりました。

皇族・王公族の参拝

多くの皇族・王公族が台湾神社に参拝しました。特に、能久親王の命日である10月28日や、台湾が日本に割譲された4月17日前後に参拝する皇族が多かったようです。また、能久親王を祀る台南神社へ参拝する事例も多く見られました。

勅使街道

勅使街道は、台北市役所前から台湾神宮前の明治橋南詰までの約3,190mの参詣道で、御成街道とも呼ばれました。

アクセス

台湾神宮跡へは、現在の台北捷運淡水線剣潭駅（旧宮ノ下駅）から徒歩約5分です。

参考文献

臺灣神社社務所 編『臺灣神社誌』（9版）松崎貞吉、1935年8月。

関連項目

北白川宮
円山大飯店
台南神社
* ChthoniC - アルバム「高砂軍」収録の『Broken Jade』のPVに台湾神宮の描写がある。

もう一度検索