台湾製糖

台湾製糖株式会社：台湾製糖業の黎明と発展

台湾製糖株式会社は、日本統治時代の台湾において、近代的な製糖業を確立した重要な企業です。その設立背景、総督府の支援、そして台湾の製糖業全体への影響について詳しく見ていきましょう。

設立の背景

19世紀末、台湾総督府は、総督児玉源太郎と民政長官後藤新平の下、台湾の産業振興を重要な政策目標としていました。中でも、製糖業は資本主義的発展の核と位置づけられ、新式製糖会社の設立が計画されました。

財界の有力者たちがこの構想に賛同し、井上馨の政治的影響力と三井財閥（三井物産主導）の支援のもと、1900年（明治33年）12月に台湾製糖株式会社が設立されました。資本金は100万円で、宮内省も1000株を出資しています。発起人には、鈴木藤三郎（初代社長）、山本悌二郎（支配人）、ロバート・W・アーウィン（相談役）、益田孝、田島信夫、上田安三郎、武智直道、長尾三十郎など、当時の財界を代表する人物が名を連ねました。

その後、台湾製糖は、1907年に大東製糖、南昌製糖、1909年に台南製糖、1912年に怡記製糖、埔里社製糖、1916年に台北製糖を次々と吸収合併し、規模を拡大していきました。

総督府の支援

台湾製糖は、台南県橋仔頭庄に台湾初の新式機械製糖工場を建設し、1902年（明治35年）1月に操業を開始しました。この工場建設に対し、台湾総督府は多額の補助金を交付し、1900年には1万2000円、1901年には5万5780円を支援しました。これは、当時の同社の資本金と比較しても非常に大きな金額であり、総督府の製糖業に対する期待の大きさを物語っています。

台湾製糖業への影響

台湾製糖株式会社の設立は、台湾の製糖業全体に大きな影響を与えました。同社の成功に触発され、1903年（明治36年）12月には鹽水港精糖株式会社（現・塩水港精糖株式会社）、1906年12月には明治製糖株式会社（現・大日本明治製糖株式会社）がそれぞれ設立されました。また、内地に本社を置いていた大日本製糖株式会社（現・大日本明治製糖）も、1906年12月に台湾へ進出しました。

台湾製糖も、1921年（大正10年）7月に福岡県荒木町（現・久留米市）に九州製糖工場（のちの株式会社ケイ・エス）を竣工し、台湾で製造した原料糖を神戸・九州の2工場で精製する体制を構築しました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、1946年（昭和21年）7月に台湾製糖の内地部分が新日本興業株式会社として再編され、10月には大東殖産株式会社に商号変更されました。1950年（昭和25年）には台糖株式会社（ファイザー株式会社の日本における源流企業）へと商号を再変更し、台湾製糖の内地にある神戸工場や営業倉庫などの残余資産を継承しました。2005年（平成17年）4月には、同じ三井グループの製糖会社である新三井製糖株式会社および株式会社ケイ・エスと合併し、解散しました。新三井製糖株式会社は、その後三井製糖株式会社と社名を変更しています。

九州工場は、大戦末期の1943年（昭和18年）に森永製菓に譲渡され、戦後は醸造工場として清酒や焼酎を製造しています。福徳長酒類本社工場となった現在も、台湾製糖時代の建物がそのまま使用されています。

一方、台湾においては、台湾・塩水港・大日本・明治の製糖会社4社の台湾における資産を国民政府が接収・合併し、1946年5月に台湾糖業公司が設立されました。台湾糖業公司は、現在も台湾で「台糖」と呼ばれ親しまれています。

台湾製糖株式会社は、台湾の製糖業の発展に大きく貢献しただけでなく、その後の企業再編を通じて、日本の製糖業界にも影響を与え続けました。その歴史は、台湾と日本の経済関係を語る上で欠かせない一部分です。

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