台湾鉄路管理局DR2700型気動車

DR2700型気動車：台湾鉄道史を彩る名車

DR2700型気動車は、かつて台湾鉄路管理局（台鉄）で運用されていた中長距離用気動車です。1966年に東急車輛製造で製造され、台湾初のステンレス鋼製車体を採用した車両として、その登場は大きな話題となりました。

設計と特徴

アメリカのRDCをベースに設計されたこの車両は、狭軌仕様の特急形気動車として、当時の台湾鉄道に新たな風を吹き込みました。車体は、バッド社のライセンスに基づき東急車輛製造で製造されたオールステンレス製で、その無塗装の銀色の輝きは、黒い蒸気機関車が主流だった当時、非常に斬新なものでした。

エンジンには、DR2500・DR2600形でも実績のあるカミンズ製335HPのものが採用され、ラジエーターはRDCと同様に屋根上中央に設置されました。また、エンジン2基搭載の準備工事も行われていましたが、実際に改造されることはありませんでした。特徴的な洞門状の排気管カバーは、1990年代に製造されたDR3000型にも引き継がれ、台鉄気動車の象徴的なデザインとなりました。

華々しいデビューと活躍

DR2700型は、1966年10月31日に西部幹線の特急「光華号」として営業運転を開始しました。最高速度110km/hを誇り、西部幹線の最速達列車としてその名を馳せました。無塗装のステンレス車体から「白鐵仔（白い鉄の子供）」という愛称で親しまれ、その洗練された外観は多くの人々を魅了しました。

1979年に西部幹線が電化されると、「光華号」の運用からは外れましたが、その後は北迴線の優等列車や、東部線の中短距離列車として活躍を続けました。晩年は台東線が主な活躍の場となり、その役割を全うしました。

その後の変遷と引退

1981年に発生した事故を契機に、前面が警戒色の黄色に塗装されましたが、後に復刻塗装として、無塗装のステンレス車体に戻された車両も登場しました。また、中間付随車は廃車され、2両編成に短縮されました。一部の車両は電気補修車や廃車となり、その数を減らしていきました。

そして、2014年7月15日、DR2700型は惜しまれつつも営業運転を終了しました。最終運転では、かつての「光華号」のヘッドマークを掲げ、初代運転士や当時の女性服務員も参加し、盛大に見送られました。

保存と復活の試み

引退後、状態の良い4両が動態保存されることになり、イベントなどでその姿を見ることができました。2015年には中華民国鉄道文化協会設立20周年記念列車が、2016年にはDR2700型50周年記念列車が運行されるなど、多くの鉄道ファンを魅了しました。しかし、2020年の定期点検でフレームの腐食が深刻であることが判明し、動態保存は中止されました。2019年が最後の運転となり、惜しまれつつもその歴史に幕を下ろしました。

DR2700型気動車の諸元

DR2700型（動力車）

製造年: 1966年
製造所: 東急車輛製造
エンジン: カミンズ NHHRTO-6-B1 335HP/2100RPM (一部車両はDR2800型の310HPエンジンに換装)
変速機: 新潟鐵工所 DBSFG-100
逆転機: RG-18
逆転減速比: 3.07
ブレーキ: SMEE 電磁空気式および手ブレーキ
燃料タンク: 500L
台車: TS-122
自重: 34t
車両長: 20,274 mm
車体幅: 2,885 mm
車高: 3,975 mm
最高速度: 110km/h
座席数: 60
客用扉: 折戸式片側1扉
製造両数: 25両

DR2750型（付随車）

製造年: 1966年
製造所: 東急車輛製造
台車: TS-122
自重: 26.0t
車両長: 20,274 mm
車体幅: 2,885 mm
車高: 3,975 mm
座席数: 64
最高速度: 110km/h
製造両数: 6両

参考文献

臺灣鐵道火車百科 - 蘇昭旭著 ISBN 957-98015-8-4
許乃懿、「走過台灣三十年」；鐵道情報91/92期、頁1-35、1996年9月/10月
台湾鉄道パーフェクト　懐かしくも新鮮な、麗しの台湾鉄道　交通新聞社トラベルMOOK　2014年5月2日　ISBN 978-4-330-44914-2
台湾鉄道の旅完璧ガイド ベストルートで台湾の魅力をたっぷり堪能！　イカロス出版　2014年8月10日　ISBN 978-4-86320-885-8

外部リンク

Train Collection-台鐵DR2700型柴油客車（繁体字中国語）

DR2700型は、台湾の鉄道史における重要な存在であり、その美しい姿は今も多くの人々の記憶に残っています。その活躍は、台湾の鉄道史に燦然と輝く一ページとして、いつまでも語り継がれることでしょう。

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