天野元政

天野元政：毛利元就七男の波瀾万丈な生涯

天野元政は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将です。毛利氏に仕え、毛利元就の七男として知られています。その生涯は、数々の合戦への参加、家督相続、豊臣姓の授与、そして家臣団内部の紛争への関与など、ドラマチックな出来事に彩られています。本稿では、彼の生涯を詳細に見ていきます。

幼少期と家督相続

永禄二年(1559年)、安芸国で生まれた元政は、毛利元就の七男でした。母は乃美大方であり、兄弟には穂井田元清、小早川秀包がいました。元政は、隣接する金明山天野氏と同様に鎌倉時代の天野遠景を祖とする安芸国の国人である生城山天野氏の家督を継承することになります。永禄十二年(1569年)、天野氏当主の元定が亡くなると、家督を巡って家中に内紛が発生しました。この騒乱を収拾するため、元就は七男である元政を元定の婿養子として天野家の家督相続させました。

武将としての活躍

天野家の家督を継いだ元政は、毛利氏の一門として数々の合戦に参加しました。天正六年(1578年)の上月城の戦いでは、兄である元清と共に軍の先頭に立ち、上月城落城という大きな功績を挙げました。その後も毛利氏の中枢を担い、慶長元年(1596年)には豊臣秀吉から豊臣姓を下賜されています。文禄・慶長の役や関ヶ原の戦いにも参戦するなど、その武勇は広く知られていました。

晩年と死

元政はその後、毛利姓に復し、慶長八年(1603年)には周防国熊毛郡三丘に封じられました。同年に、父・元就の三十三回忌にあたることを機に、元就の遺歯を納めた供養塔を建立しています。元就の遺歯を肌身離さず持ち歩いていたという逸話は、父子間の深い愛情を感じさせます。また、右田一万三千石も与えられ、権力基盤を固めました。しかし、息子である元雅、元嘉には天野の名字を名乗らせました。慶長十年(1605年)の萩城築城を巡る家中の争い（五郎太石事件）では、天野元信、益田元祥の言い分を調査し、毛利輝元に報告するなど、家臣団内の紛争解決にも重要な役割を果たしました。慶長十四年(1609年)四月二十九日、萩で死去。享年五十一歳でした。

系譜とその後

元政には多くの妻や子がいました。その子孫は、右田毛利家として毛利氏の家系を継承していきました。彼の死後も、右田毛利家は毛利氏の一門として存続し、日本の歴史に名を刻むことになります。元政の生涯は、戦国時代から江戸時代初期にかけての激動の時代を生き抜いた、一武将の生き様を克明に示しています。彼の功績は、単なる武勇だけでなく、家督相続問題や家臣団内部の紛争解決への貢献など、多岐にわたるものでした。

参考文献

『日本人名大辞典』
防長新聞社山口支社編 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修、防長新聞社、1966年3月
復刻版 田村哲夫編修 編「一門右田毛利家」『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修（復刻版）、マツノ書店、1980年11月
『萩藩閥閲録』

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