司馬朗

司馬朗（しば ろう）

司馬朗（171年 - 217年）は、後漢時代末期の政治家。字は伯達（はくたつ）。秦末の殷王司馬卬（しば こう）を祖とする名門・司馬氏の出身で、司馬防（しばぼう）の長男であり、司馬懿（しばい）・司馬孚（しばふ）らの兄にあたります。

生涯

幼い頃から聡明で、厳格な父・司馬防から厳しく育てられました。9歳の時、父の友人が父の字を軽々しく呼んだのに対し、「他人の親を軽んじる者は自分の親も軽んじている」と諫めたという逸話が残っています。その友人は大いに恥じ入ったと伝えられています。

12歳で経典暗誦の試験に合格し童子郎（どうじろう）となります。ある人に年齢を疑われた際には、「我が家は代々大柄な家系であり、私自身は若輩ながら出世欲がない」と堂々と答えました。

初平元年（190年）、董卓（とうたく）が洛陽を掌握した際、父の司馬防は司馬朗に家族を連れて故郷へ戻るよう命じます。しかし、司馬朗が帰郷しようとしていることが董卓に密告され、逮捕されてしまいます。董卓は司馬朗に「お前は亡くなった私の息子と同い年だ。なぜ私を見捨てるのか？」と問いますが、司馬朗は「世は乱れており、郷里も衰退し、民は飢えに苦しむだろう」と答えました。董卓はその堂々とした態度を評価したと言われています。

司馬朗は董卓の没落を予見し、腹心に賄賂を贈り、一族を率いて故郷へ脱出することに成功します。

22歳（数え年）の時、曹操（そうそう）に召し出されて司空掾属（しくうえんぞく）となり、成皋県令（せいごうけんれい）などの地方官を歴任します。ただし、曹操が司空に任じられたのは196年であり、没年から逆算すると司馬朗は26歳となるため、年齢には疑問が残ります。病のため一時職を辞しますが、回復後に堂陽県令（どうようけんれい）として復帰。領民に寛大な政策を行い、慕われる善政を敷きました。その功績が認められ、元城県令（げんじょうけんれい）を経て中央に召還され、丞相主簿（じょうしょうしゅぶ）に任じられます。

その後、兗州刺史（えんしゅうしし）となり、内政手腕を存分に発揮。領民に寄り添う政治を行い、多くの人々から敬愛されました。

ある時、崔琰（さいえん）から「君の才能は弟の司馬懿には及ばない」と評されますが、司馬朗は全く気にせず、笑って同意し、弟の才能を高く評価していたと伝えられています。

217年、夏侯惇（かこうとん）に従い、臧覇（ぞうは）らと共に孫権（そんけん）征伐に参加。しかし、陣中で疫病が蔓延し、多くの兵士が病に倒れます。司馬朗は兵士たちに薬を分け与え、自身は薬を飲まなかったため病死しました。享年47歳。その死を悼み、多くの人々が涙を流したと伝えられています。

司馬懿は兄の死後、「私は人格者としては、亡き兄に及ばなかった」と回顧したと言われています。

子

司馬遺（しば い）：明帝（めいてい）の時代に昌武亭侯（しょうぶていこう）に封じられました。
司馬望（しば ぼう）：司馬孚の長男。司馬朗と司馬遺の死後、司馬朗の養子となり、後を継ぎました。義陽成王（ぎようせいおう）に封じられています。

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