吉備塚古墳

吉備塚古墳：吉備真備の伝説を秘めた古墳

吉備塚古墳は、奈良県奈良市高畑町、奈良教育大学のキャンパス内にひっそりと佇む古墳です。古くから吉備真備の墓として伝えられてきましたが、その実態は謎に包まれていました。

地理的特徴

古墳は、奈良盆地北東部の緩やかな段丘上に位置し、標高は約110m。周辺は春日断層崖下の段丘が東西に発達し、北は飛火野南縁の谷、南は能登川の谷に挟まれています。古墳自体は、直径約20m、高さ約3-4mの円墳ですが、北西に高まりが伸びているため、全長約40mの前方後円墳の可能性も指摘されています。

吉備真備との関係

吉備塚という名前が示す通り、この古墳は奈良時代に遣唐使として活躍し、暦学などを日本に伝えた吉備真備の墓であるという伝承が古くから存在します。江戸時代の古文書にも大和国の名所として記録され、明治時代には旧陸軍連隊の敷地、第二次世界大戦後には米軍キャンプとして利用されましたが、1958年に奈良教育大学が移転し、現在に至ります。

発掘調査による新たな発見

1986年、古墳時代中期後半の特徴を持つ画文帯環状乳神獣鏡が採集され、吉備真備の時代とは異なる古墳である可能性が浮上しました。2002年度から2003年度にかけて奈良教育大学が行った学術調査では、墳頂部から2基の埋葬施設が確認され、5世紀後葉から6世紀初頭の埴輪片や2基の木棺直葬、三累環頭大刀、貝装雲珠、小札甲など、数多くの遺物が出土しました。

これらの調査結果から、吉備塚古墳は5世紀後半から6世紀初期に第1埋葬施設、6世紀の第二四半世紀に第2埋葬施設が造営されたと推定されています。吉備真備の墓という伝承は、古墳の歴史とは異なる側面を持つことが明らかになりました。

吉備塚古墳は、古代日本の歴史を物語る貴重な史跡として、これからも大切に保存されていくことでしょう。

関連情報

吉備真備
奈良教育大学
鬼界ヶ島 (奈良市)

外部リンク

吉備塚古墳の調査（奈良教育大学、2006年3月）
* 吉備塚古墳と出土三累環頭大刀（湯川真朗「現説公開サイト」）

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