小札甲

小札甲（こざねよろい/こさねよろい）または札甲（さねよろい）について

小札甲（こざねよろい）または札甲（さねよろい）は、短冊状の小さな板である小札（こざね）を多数用いて作られた日本の甲冑の一形式です。小札には穴が穿けられており、そこに紐を通して連結することで、柔軟性と防御力を兼ね備えた装甲を構成します。

概要

小札甲は、板甲（いたよろい）と比較して、騎乗時の体の動きに対応しやすいという利点がありました。小札の材質には、鉄や革が用いられ、稀に金銅製のものも存在します。古墳時代には鹿角製の小札甲も確認されています。

小札の構造と連接

小札一枚の大きさは時代や地域によって異なりますが、一般的に幅2〜3センチメートル、長さ6〜7センチメートル程度です。小札には複数の穴が開けられており、縅毛（おどしげ）と呼ばれる紐を通して数十枚の小札を横一列に連結します。さらに縦方向にも連結することで、一枚の装甲板を形成します。

小札の連接には、縅（おどし）、綴じ（とじ）、鋲留め（びょうどめ）といった技法が用いられます。縅は、小札の穴に紐を通して連結することで、装甲板に可動性を持たせる技法です。一方、綴じや鋲留めは、紐で括ったり鋲を打ったりすることで、装甲板同士を完全に固定する技法です。

日本における小札甲の歴史

日本列島においては、古墳時代に小札甲が出現し、古代から中世、近世に至るまで主要な甲冑の形式として存続しました。奈良・平安時代前期には挂甲（けいこう）・短甲（たんこう）と呼ばれ、平安時代中期以降には、武士の戦闘用防具として知られる大鎧（おおよろい）や胴丸（どうまる）、腹巻（はらまき）などに発展しました。

世界の小札甲

日本列島以外の地域、特にヨーロッパなどでは、小札甲は「ラメラーアーマー」と呼ばれ、小札は「レーム」と呼ばれています。

日本列島における小札甲の詳細

日本の歴史学・考古学では、小札を用いた甲冑を「小札甲」または「札甲」と呼びます。

古墳時代の小札甲

古墳時代前期には、板甲とともに小札を綴じた甲冑も少数存在しました。この時期の小札甲は綴じ技法を用いるものが多く、舶載品と考えられています。古墳時代中期になると、大陸から再び小札甲が導入され、縅技法が主体となります。古墳時代後期には、板甲に代わって小札甲が主要な甲冑の地位を確立し、奈良・平安時代の短甲・挂甲へとつながっていきます。

飛鳥・奈良・平安時代の小札甲

飛鳥時代から奈良・平安時代前期にかけて、小札甲は短甲・挂甲として使用されました。『東大寺献物帳』には、短甲10具、挂甲90領が献納されたという記述があります。

宮崎隆旨の研究によると、短甲は胴部を一周させて一ヶ所で引き合わせる胴丸式の小札甲であり、挂甲は肩から吊るした2枚の札板で胴部を挟み、両脇を脇楯で防護する裲襠（りょうとう）式の小札甲であると推定されています。

平安時代中期以降の小札甲

平安時代中期以降、武士勢力の台頭とともに、大鎧や胴丸といった新たな甲冑形式が出現しました。大鎧は挂甲から、胴丸は短甲から発展したものと考えられています。また、挂甲・短甲が官製の甲冑であるのに対し、大鎧と胴丸は武士が個人的に所有する甲冑の始まりと考えられています。

鎌倉時代以降の小札甲

鎌倉時代には、腹巻や腹当といった甲冑が出現しましたが、いずれも小札甲です。

室町時代には、小札の重ね方や縅し方に変化が見られ、伊予札（いよざね）や素懸縅（すがけおどし）といった新しい技法が登場しました。戦国時代には、当世具足（とうせいぐそく）が出現し、小札の代わりに板札や一枚板が用いられるようになりました。

江戸時代の小札甲

江戸時代には、実戦で甲冑が使われることがなくなり、飾りとしての当世具足に虚飾が加えられるようになりました。中世復古調の小札甲も製作されましたが、時代考証に則っていないものも多く見られました。

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