吉富製薬
吉富製薬株式会社（英文表記：YOSHITOMI PHARMACEUTICAL INDUSTRIES, LTD.）は、2000年まで存在した日本の主要な製薬企業のひとつです。一般には「ヨシトミ」という略称で知られていました。武田グループの国内子会社という位置づけにあり、東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部に上場していました。
同社は、医療用医薬品と化学品の研究開発、製造、販売を事業の核としていました。中でも、精神科領域の医薬品に強みを持つスペシャリティファーマとしての特色が際立っていました。精神疾患に関連する医薬品の開発・供給に重点を置き、この分野で確固たる地位を築きました。かつては、一般用医薬品事業も行っていましたが、後に再編対象となりました。
吉富製薬のルーツは、1940年8月1日に設立された武田化成株式会社に遡ります。これは、当時の有力企業であった株式会社武田長兵衛商店（現在の武田薬品工業株式会社）と日本化成工業株式会社（現在の三菱ケミカル株式会社）が共同で出資して生まれました。設立間もない1942年5月には、福岡県築上郡東吉富村（現在の吉富町）に吉富工場が完成し、研究開発と生産活動が開始されました。その後、1946年12月10日に社名を吉富製薬株式会社へと改称し、製薬企業としての歩みを本格化させました。
戦後、同社は着実に成長を遂げます。1948年7月にはハンセン病治療剤「プロトミン」を発売するなど、社会的に必要とされる医薬品を提供しました。1949年5月16日には東京証券取引所と大阪証券取引所の第一部に上場を果たし、信頼性を高めました。1950年にはドイツのバイエル社と医薬品販売に関する提携を結び、国際的な事業展開の基礎を築きます。1954年には化成品事業部門を新たに設け、事業の多角化を図りました。
研究開発体制の強化も重要な取り組みでした。1961年には東京都北区に東京研究所が竣工し、研究活動の拠点が整備されました。1962年には大阪市東区（現在の大阪市中央区道修町）に本社ビルを建設し、本社機能を強化しました。1968年には三重県に久寿工場を竣工させるなど生産能力を拡大し、1970年には吉富工場内に中央研究所（後に九州研究所）を開設しました。バイエル社との連携はさらに深まり、1973年4月5日にはバイエル薬品株式会社が、武田薬品、吉富製薬、バイエルの3社合弁で設立されています。
同社の製品の中でも特に知られるのは、1984年に発売された日本初の抗不安薬「デパス」（一般名：エチゾラム）です。この製品は、精神科領域における同社の高度な開発力を示すものとなり、広く臨床で使用されました。また、医薬品の販売体制を強化するため、1980年4月1日からは自社販売体制へと移行しました。事業の効率化や専門性向上を目的に、ルシドール吉富（後のアルケマ吉富）、成和興業（現在の田辺三菱製薬プロビジョン）、成和倉庫（現在のMPロジスティクス）、エム・アンド・ティ吉富（現在のエーピーアイコーポレーション）、トミジェック吉富（現在の吉富薬品）、吉富ファインケミカル（現在のエーピーアイコーポレーション）、吉富神経科学研究所など、様々な関連会社を設立しました。一般用医薬品事業は、1988年に日本たばこ産業との合弁で設立された株式会社ライフィックスが担いました。
1990年代後半は、製薬業界の大規模な再編の時代であり、吉富製薬もその波の中にありました。1998年4月1日、同社は株式会社ミドリ十字を吸収合併し、新たな組織体制を構築しました。この合併に際し、営業本部内に精神科医薬品事業本部が設置され、主要事業分野である精神科領域への注力がさらに明確化されました。営業体制も全国規模で再編成されました。
そして、2000年4月1日、吉富製薬株式会社は社名をウェルファイド株式会社に変更します。これはミドリ十字との合併による統合完了を象徴する動きでしたが、同時に、精神科医薬品分野はトミジェック吉富株式会社および株式会社エイパムと統合され、吉富薬品株式会社として分社化されました。その後、ウェルファイド株式会社は、2001年10月1日に三菱東京製薬株式会社と合併し、三菱ウェルファーマ株式会社となります。三菱ウェルファーマは、さらに2007年に田辺製薬株式会社と合併し、現在の田辺三菱製薬株式会社となりました。このように、吉富製薬株式会社は、日本の製薬業界における歴史的な再編・統合プロセスを経て、現在の田辺三菱製薬にその系譜が引き継がれています。
同社の社章は、武田グループの国内向けロゴである三角形に白抜きの「化」の文字が配され、その下に「ヨシトミ」と添えられたデザインでした。これは、設立経緯における化学分野との関連や武田グループの一員であること、そして社名を示すものでした。本社や主要工場、研究所、支店、営業所など全国各地に拠点を展開していましたが、その後の再編や統合により、これらの多くは閉鎖されたり、組織が再編されたりしています。
吉富製薬株式会社は、武田グループの一翼として、特に精神科領域を含む医療用医薬品の開発・製造・販売を通じて日本の医療に貢献した企業です。その歴史は、ミドリ十字、ウェルファイド、三菱ウェルファーマといった変遷を経て、今日の田辺三菱製薬へと繋がっており、同社が培った技術や精神科領域における知見は、現代の医薬品産業の中に受け継がれています。
同社は、医療用医薬品と化学品の研究開発、製造、販売を事業の核としていました。中でも、精神科領域の医薬品に強みを持つスペシャリティファーマとしての特色が際立っていました。精神疾患に関連する医薬品の開発・供給に重点を置き、この分野で確固たる地位を築きました。かつては、一般用医薬品事業も行っていましたが、後に再編対象となりました。
吉富製薬のルーツは、1940年8月1日に設立された武田化成株式会社に遡ります。これは、当時の有力企業であった株式会社武田長兵衛商店（現在の武田薬品工業株式会社）と日本化成工業株式会社（現在の三菱ケミカル株式会社）が共同で出資して生まれました。設立間もない1942年5月には、福岡県築上郡東吉富村（現在の吉富町）に吉富工場が完成し、研究開発と生産活動が開始されました。その後、1946年12月10日に社名を吉富製薬株式会社へと改称し、製薬企業としての歩みを本格化させました。
戦後、同社は着実に成長を遂げます。1948年7月にはハンセン病治療剤「プロトミン」を発売するなど、社会的に必要とされる医薬品を提供しました。1949年5月16日には東京証券取引所と大阪証券取引所の第一部に上場を果たし、信頼性を高めました。1950年にはドイツのバイエル社と医薬品販売に関する提携を結び、国際的な事業展開の基礎を築きます。1954年には化成品事業部門を新たに設け、事業の多角化を図りました。
研究開発体制の強化も重要な取り組みでした。1961年には東京都北区に東京研究所が竣工し、研究活動の拠点が整備されました。1962年には大阪市東区（現在の大阪市中央区道修町）に本社ビルを建設し、本社機能を強化しました。1968年には三重県に久寿工場を竣工させるなど生産能力を拡大し、1970年には吉富工場内に中央研究所（後に九州研究所）を開設しました。バイエル社との連携はさらに深まり、1973年4月5日にはバイエル薬品株式会社が、武田薬品、吉富製薬、バイエルの3社合弁で設立されています。
同社の製品の中でも特に知られるのは、1984年に発売された日本初の抗不安薬「デパス」（一般名：エチゾラム）です。この製品は、精神科領域における同社の高度な開発力を示すものとなり、広く臨床で使用されました。また、医薬品の販売体制を強化するため、1980年4月1日からは自社販売体制へと移行しました。事業の効率化や専門性向上を目的に、ルシドール吉富（後のアルケマ吉富）、成和興業（現在の田辺三菱製薬プロビジョン）、成和倉庫（現在のMPロジスティクス）、エム・アンド・ティ吉富（現在のエーピーアイコーポレーション）、トミジェック吉富（現在の吉富薬品）、吉富ファインケミカル（現在のエーピーアイコーポレーション）、吉富神経科学研究所など、様々な関連会社を設立しました。一般用医薬品事業は、1988年に日本たばこ産業との合弁で設立された株式会社ライフィックスが担いました。
1990年代後半は、製薬業界の大規模な再編の時代であり、吉富製薬もその波の中にありました。1998年4月1日、同社は株式会社ミドリ十字を吸収合併し、新たな組織体制を構築しました。この合併に際し、営業本部内に精神科医薬品事業本部が設置され、主要事業分野である精神科領域への注力がさらに明確化されました。営業体制も全国規模で再編成されました。
そして、2000年4月1日、吉富製薬株式会社は社名をウェルファイド株式会社に変更します。これはミドリ十字との合併による統合完了を象徴する動きでしたが、同時に、精神科医薬品分野はトミジェック吉富株式会社および株式会社エイパムと統合され、吉富薬品株式会社として分社化されました。その後、ウェルファイド株式会社は、2001年10月1日に三菱東京製薬株式会社と合併し、三菱ウェルファーマ株式会社となります。三菱ウェルファーマは、さらに2007年に田辺製薬株式会社と合併し、現在の田辺三菱製薬株式会社となりました。このように、吉富製薬株式会社は、日本の製薬業界における歴史的な再編・統合プロセスを経て、現在の田辺三菱製薬にその系譜が引き継がれています。
同社の社章は、武田グループの国内向けロゴである三角形に白抜きの「化」の文字が配され、その下に「ヨシトミ」と添えられたデザインでした。これは、設立経緯における化学分野との関連や武田グループの一員であること、そして社名を示すものでした。本社や主要工場、研究所、支店、営業所など全国各地に拠点を展開していましたが、その後の再編や統合により、これらの多くは閉鎖されたり、組織が再編されたりしています。
吉富製薬株式会社は、武田グループの一翼として、特に精神科領域を含む医療用医薬品の開発・製造・販売を通じて日本の医療に貢献した企業です。その歴史は、ミドリ十字、ウェルファイド、三菱ウェルファーマといった変遷を経て、今日の田辺三菱製薬へと繋がっており、同社が培った技術や精神科領域における知見は、現代の医薬品産業の中に受け継がれています。
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