三菱ウェルファーマ

三菱ウェルファーマ株式会社

かつて日本に存在した製薬会社である三菱ウェルファーマ株式会社は、2001年10月1日に、当時のウェルファイド株式会社を存続会社として三菱東京製薬株式会社を吸収合併する形で誕生しました。当初は三菱グループ、三菱化学（現在の三菱ケミカル）グループ、そしてタケダグループの一員として位置づけられていましたが、企業組織の再編を経て、2005年10月3日には株式移転により設立された持株会社、株式会社三菱ケミカルホールディングス（現・三菱ケミカルグループ）の完全子会社となりました。その歴史は比較的短く、2007年10月1日には、田辺製薬株式会社に吸収合併され、現在の田辺三菱製薬株式会社として引き継がれています。

設立と事業展開

両社の合併交渉が始まったのは2000年11月のことでした。翌年10月に正式に設立された三菱ウェルファーマは、旧ウェルファイドの本社機能を引き継ぎ、大阪府大阪市に登記上の本店・本社を置きました。旧三菱東京製薬の本社社屋は東京オフィスとして活用されました。設立当初から海外展開にも積極的で、旧三菱東京製薬の英国法人を改組するとともに、米国にも新たな現地法人を設立。さらに、中国上海事務所を開設するなど、グローバルな事業展開を図りました。

組織と事業再編

会社設立後の数年間、三菱ウェルファーマは組織の効率化や事業の選択と集中を進めました。2002年10月には、生物製剤部門を株式会社ベネシスとして分社化し、血液製剤事業を移管。また、吉富ファインケミカルと三菱化学の一部事業を統合し、株式会社エーピーアイコーポレーションを設立するなど、関連会社の再編も行いました。事業ポートフォリオの見直しも進められ、2003年には海外の血漿分画事業や自社原薬事業、健康食品事業を、2004年には一般用医薬品事業（「サロメチール」などの大衆薬）やビタミンB2事業を他社へ譲渡するなど、医療用医薬品事業への特化を進めました。研究開発拠点や製造体制についても再編が行われ、いくつかの研究所や製造所が閉鎖される一方、足利工場と吉富工場を統合してMPテクノファーマ株式会社を設立するなど、新たな製剤・包装物流関連会社も立ち上げられました。

主要製品と社会的側面

三菱ウェルファーマは、医療用医薬品の開発・製造・販売を主軸としました。「アンプラーグ」、「ウルソ」、「オメプラゾン」（世界初のプロトンポンプ阻害薬）、「コレバイン」、「ラジカット」（世界で唯一のフリーラジカルスカベンジャー）、「クリアナール」、「ジオン注」など、様々な領域の製品を手がけました。特に、旧ミドリ十字から引き継いだ血液製剤事業は子会社のベネシスに移管されましたが、この事業は1990年代に大きな社会問題となった薬害エイズ事件やフィブリノゲン問題（C型肝炎感染）に関連していました。これらの問題については、同社は被害者との間で和解を進めました。また、企業活動の一環として、2003年から2006年にかけて特定の政党へ政治献金を行っていた時期もありました。

合併による歴史の終焉

独立した製薬会社としての三菱ウェルファーマの歴史は、田辺製薬株式会社との経営統合によって幕を閉じます。2007年2月2日に合併契約が調印され、同年10月1日、田辺製薬を存続会社とする形で合併が実行されました。これにより、両社の事業、人材、資産は現在の田辺三菱製薬株式会社に引き継がれました。合併後も一部の関連会社は名称を変更するなどして存続し、新たな体制の下で事業が続けられています。例えば、製剤関連会社のMPテクノファーマ株式会社は田辺三菱製薬工場株式会社に、生物製剤子会社の株式会社ベネシスは、一部事業が一般社団法人日本血液製剤機構へ移管される一方、残りの事業は田辺三菱製薬本体に統合されるなど、その後の変遷を辿りました。このように、三菱ウェルファーマは短期間ながら、前身会社の事業を統合し、積極的な事業再編と製品展開を行った後、日本の主要製薬会社の一つである田辺製薬との合併を通じて、現代の製薬産業における重要な一章を形成した企業でした。

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