吉村家住宅

吉村家住宅の魅力と歴史

吉村家住宅（よしむらけじゅうたく）は、大阪府羽曳野市にある日本の古民家で、初めて重要文化財に指定された民家として知られています。そのユニークな建築様式と、東京の東京都庁舎に与えた影響からも、その価値が理解されるでしょう。

吉村氏の来歴

吉村氏の先祖は近江源氏の一族で、歴史的には旧河内国の丹下の地に根付いていたとされています。南北朝時代には南朝に属し、その後は北朝に与しました。天正期には、織田信長による河内の平定により、丹下城が破壊されたことから、氏名を吉村に改め、城跡の近くで政所を構えました。江戸中期からは周辺の村々を統治する大庄屋となり、維新までその権力を保ちました。

建築と文化財指定

吉村家住宅の主屋は、1615年に大坂の夏の陣後に再建されたと考えられています。特徴的なのは、その屋根の構造で、急勾配の茅葺屋根と低勾配の瓦屋根が組み合わさっています。このスタイルは主に大和から河内・和泉にかけて見られる大和棟造りと呼ばれ、地域性を反映しています。

また、延宝年間には桃山様式の数寄屋造りに改築され、1937年には民間の家屋として初めて国の文化財に指定されました。重要文化財の指定は住宅が文化財として保護される新たな前例を作り、1950年以降は重要文化財に名称が変更されましたが、その保護は続いています。

復原とその影響

吉村家住宅は、再建から約3世紀の間に改変が行われましたが、法隆寺の保存技術を用いて1953年に元の姿に復原されました。この際の修復方法は、民間住宅の保存における画期的なモデルともなりました。

復原された主屋は、江戸中期の美しい建築となりましたが、今では現代の居住には不向きな形となっています。しかし、この復原の際に作成された図面が、丹下健三の東京都庁舎のファサードデザインに影響を与えました。面白いことに、丹下健三も吉村氏の一族にあたるため、歴史的に深いつながりがあります。

形式・構造

吉村家住宅の主屋は、江戸時代前期に建設され、41.2メートルの桁行きと11.4メートルの梁間を持ちます。屋根は切妻造りで、茅葺きと本瓦葺きが使われています。表門は寛政10年に建設され、入母屋造りの茅葺屋根を持つ長屋門です。また、土蔵は18世紀前半に築かれ、土造りで美しく、当時の生活様式を伺わせる建物です。

公開状況

吉村家住宅は春と秋に特別公開され、一般の人々にその歴史的価値を伝えています。この貴重な文化財を通じて、過去の日本の生活様式や建築の技術を学ぶ機会を提供しています。

参考文献

• - 吉村家修理事務所『重要文化財住宅吉村家修理報告書』
• - 大河直躬『日本建築史基礎資料集成 二十一 民家』
• - 川村善之『日本民家の造形』

吉村家住宅は、単なる建物以上の存在です。地域の歴史を感じさせ、文化財としての意義を再認識させてくれる貴重な遺産です。

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