政所

政所（まんどころ）について

政所は、平安時代から続く家政機関であり、主に親王や三位以上の公卿の家政を管理していました。この機関は、皇族や公卿が日常生活や家事を円滑に行うためのものとされ、そこで働く官僚を「家司」と呼んでいました。政所の設立は、家庭内での行政的な役割を担うため、また、特定の地位の者にのみ設置が許可されていたという点も重要です。

政所の歴史的背景

平安時代にルーツを持つ政所は、荘園制の確立とともに本所の荘務の管理も担うようになりました。しかし、中世後期には荘園が衰退し、公家の家政は次第に不振に陥り、政治機能としての役割は失われつつありました。政所は一時、家庭内の家政を監督する機関として機能していましたが、その実質は次第に希薄になっていきました。

特に注目すべきは「政所政治」説という学説で、この理論は戦前に提唱され、摂関政治期には摂政や関白が実質的に国政を取っていたとするものでした。しかし、戦後に異議が唱えられ、実際には摂政・関白と天皇との間においても、政治判断は共に行われていたことが明らかとなりました。このため、この説は現在では立証されていません。

鎌倉幕府の政所

政所は鎌倉幕府においても重要な役割を果たしました。鎌倉幕府の前身は公文所であり、この組織は源頼朝が創設した政権における基幹機関の一つとなりました。頼朝は自らが権威を築くため、従三位以上の公卿に許された政所の設置権を獲得し、これによって律令制に基づく公的機関の形質を帯びました。

政所は一般的な政務や財政を担当しており、表記が公文所から政所に改められた時期にはさまざまな見解があります。特に1191年や1185年の説がありますが、この時期に頼朝が昇叙して政所への設置資格を得たことが変遷に関わっているとされています。

政所の機構

政所は複数の役職から成り立っており、政所の長官である「別当」を初代は大江広元が務めました。政所には次官に「令」、上級役人の「政所執事」などの役職がありました。執事は政務に参与し、会計業務を担当して、その地位は世襲されることもありました。

室町時代の政所

室町時代においても政所は重要な役割を担い、特に財政や領地に関する訴訟を管理する職が設置されました。執事は当初、二階堂氏や京極氏が任じられていましたが、その後伊勢氏が世襲するようになりました。政所の組織は時を経て構成が変化し、各種役職も変遷を遂げながら、政治や経済の中心として機能し続けました。

政所は、日本の政治史においてその設立以来、一貫して政治や家政に重要な役割をもっており、歴代の政権に影響を与えてきた重要な機関なのです。

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