吉村長策(よしむら ちょうさく)
吉村長策は、
1860年4月8日(
万延元年3月18日)に大阪で生まれ、
1928年(
昭和3年)
11月22日に生涯を閉じた、
明治から
大正時代にかけての日本の海軍技師、土木技術者です。旧姓は西尾で、日本の近代水道整備において重要な役割を果たしました。
生い立ちと学歴
吉村長策は、西尾直彦の次男として大阪に生まれました。
1868年(
明治元年)11月には、吉村武右衛門の絶家を再興し、吉村姓を名乗るようになりました。
1885年(
明治18年)には
工部大学校(現在の東京大学工学部)土木工学科を卒業し、その後、同校の助教授として教鞭を執りました。
技術者としての活躍
工部大学校での職を辞した後、吉村は
長崎県技師として、
長崎市水道工師長に就任しました。ここで、日本初の上水道専用ダムである本河内高部貯水池の建設を指揮し、その卓越した技術力を示しました。
1891年(
明治24年)には
大阪市技師に転じ、翌年には同市水道敷設副工事長として
大阪市水道の建設に従事し、
1895年(
明治28年)にこれを完成させました。
その後、臨時広島軍用水道工事長を経て、
1896年(
明治29年)には
神戸市水道工事長に転任しました。神戸では、佐藤藤次郎らを指導し、日本初の
重力式コンクリートダムである
布引五本松ダムを
1899年(
明治32年)に完成させるという偉業を成し遂げました。
海軍技師としてのキャリア
1899年(
明治32年)に海軍技師に転じ、翌年には
佐世保鎮守府建設部建築科長に就任しました。
1911年(
明治44年)には臨時海軍建築部工務監、
1920年(
大正9年)10月1日には海軍建築本部長に発令され、
1923年(
大正12年)3月31日に退官しました。
1915年(
大正4年)には工学博士の学位を取得しています。
海軍退官後も、
錦鶏間祗候となり、海軍鎮守府の工事や、門司、小倉、福岡、佐世保、長野など各都市の水道拡張工事に顧問として尽力しました。
栄典と家族
吉村長策は、その功績が認められ、
1923年(
大正12年)
4月30日に
従三位に叙せられました。次女のツルは、海軍造船中将である野中季雄と結婚しました。
参考文献
人事興信所『人事興信録 第4版』人事興信所、1915年。
人事興信所『人事興信録 第8版』人事興信所、
1928年。
内閣 大正13年「吉村長策錦鶏間祗候被仰付ノ件」国立公文書館
高橋裕、藤井肇男 共著『近代日本土木人物事典: 国土を築いた人々』鹿島出版会、2013年。
吉村長策は、その卓越した技術力とリーダーシップによって、日本の近代化に大きく貢献した人物として、その名は後世に語り継がれています。