吉田㥲

吉田㥲：日本の機甲戦力を築いた軍人

吉田㥲（よしだ しん、1887年4月15日-1965年6月12日）は、日本陸軍の軍人で、最終階級は陸軍中将に上りました。山形県出身で、旧姓は渡辺です。陸軍士官学校を卒業後、騎兵としてキャリアを積み重ね、参謀本部勤務や欧州出張などを経て、着実に階級を上げていきました。

華麗なる軍歴：騎兵から機甲戦力の立役者へ

吉田㥲の軍歴は、騎兵少尉として近衛騎兵連隊に配属されたことから始まります。その後、陸軍大学校を卒業し、参謀本部、陸軍省軍務局課員、騎兵連隊長などを歴任しました。特に、騎兵第16連隊長としての経験は、後の機甲部隊の指揮官としての礎となりました。

昭和11年には陸軍少将に昇進し、陸軍騎兵学校幹事に着任。翌年には農林省馬政局次長に就任し、馬政に関する政策にも携わりました。この間、二・二六事件の軍法会議では裁判長を務め、西田税と北一輝に死刑判決を下しました。しかし、吉田は軍上層部の強い死刑判決への意向に反発し、判決の期日を大幅に遅らせるなど、事件への複雑な思いを日記に綴っています。

昭和14年には、駐蒙軍隷下の騎兵集団長に就任し、同年に陸軍中将に昇進。その後、騎兵監を経て、陸軍機甲本部長として太平洋戦争を迎えました。機甲部隊の創設と発展に大きく貢献し、機甲戦力の基盤を築いたと言えるでしょう。

太平洋戦争中は、新設の機甲軍司令官として満洲に駐屯。終戦後には関東防衛軍司令官を務め、昭和20年に予備役に編入されました。戦後、満洲電信電話株式会社総裁に就任しましたが、昭和22年には公職追放の仮指定を受けました。

機甲兵のモットー『機甲斯くあるべし』

吉田㥲は、初代陸軍機甲本部長として、機甲兵のモットー『機甲斯くあるべし』を考案したと伝えられています。「一瞥克制機」「万信必通達」「千車悉快走」「百発即百中」「練武期必勝」「陣頭誓報告(国)」という六つの言葉から成り、戦中のみならず、戦後の陸上自衛隊機甲科においても、訓練の際の訓示などで使用されるなど、現代でも受け継がれる名言です。

吉田㥲の足跡：軍人としての生涯とその後

吉田㥲は、長年に渡る軍人生活の中で、騎兵から機甲戦力へと時代に合わせて役割を変化させながら、常に日本の軍事力強化に貢献しました。二・二六事件への関与や、戦後の公職追放など、複雑な時代を生き抜いた人物像は、歴史の大きな転換期を象徴しています。

その功績は、単なる軍人としての役割を超え、現代の防衛体制にも影響を与え続けています。『機甲斯くあるべし』という言葉は、吉田㥲の軍人としての姿勢、そして日本の防衛への強い意志を後世に伝えています。また、著書『一軍人の随想録』は、彼自身の経験や考えを後世に伝える貴重な資料となっています。

彼の生涯は、日本の近代史、特に軍事的発展における重要な一断面を示しており、軍人としての力量と時代背景を理解することで、より深く理解することができます。様々な資料から、吉田㥲という人物像を多角的に見ていくことが重要です。

もう一度検索