陸軍機甲本部

陸軍機甲本部について

陸軍機甲本部（りくぐんきこうほんぶ）は、大日本帝国陸軍の機関の一つであり、陸軍大臣の指揮下で機甲部隊と騎兵部隊に関する業務を統括していました。陸軍省の外局として、部隊の教育、編成、技術開発などを管理し、陸軍の機械化を推進する重要な役割を担いました。

設立の背景

1939年に始まった第二次世界大戦において、ドイツ軍が電撃戦と呼ばれる戦術で機甲部隊を効果的に活用している状況を受け、日本陸軍も機甲部隊の重要性を認識しました。それまで航空部隊を統括していた陸軍航空本部の成功例を参考に、機甲部隊を専門的に統括する機関の設立が決定されました。

1941年4月10日、「陸軍機甲本部令」（勅令第405号）が施行され、陸軍機甲本部が正式に発足しました。この本部は、陸軍省の外局として位置づけられ、機甲部隊と騎兵部隊の教育、戦車などの開発研究、部隊編成などを担当しました。

任務と組織

陸軍機甲本部の主な任務は、以下の通りでした。

機甲部隊と騎兵部隊の専門的な教育。
関係する陸軍学校の管理運営。
戦車、牽引車、自動車の整備に関する事項。
機甲部隊、騎兵部隊、および諸兵科連合部隊の研究調査。
戦車、牽引車、自動車、燃料の研究開発。

組織としては、本部長の下に庶務課、第一課、第二課、第三課が置かれ、各課がそれぞれの専門分野を担当しました。本部設立と同時に、教育総監部の第二部と騎兵監部が廃止され、その業務の一部が機甲本部に移管されました。

庶務課: 部内の庶務、人事、経理などを担当。
第一課: 部隊の編制、装備、動員、研究、人事、予算などを担当。
第二課: 部隊の教育、典令範、少年戦車兵学校の運営などを担当。
第三課: 戦車、牽引車、自動車などの調査、研究、整備などを担当。

移転と終焉

当初、陸軍機甲本部は東京市麹町区永田町の陸軍省構内に設置されましたが、1941年12月7日には東京市牛込区市谷本村町の陸軍士官学校跡地に移転しました。この移転は、太平洋戦争開戦の前日に実施され、陸軍省自体もその翌週に同地へ移転しました。

1945年8月に日本はポツダム宣言を受諾し、第二次世界大戦は終結しました。同年11月26日、「陸軍機甲本部令」が廃止され、陸軍機甲本部も解散しました。

年譜

1941年4月: 陸軍機甲本部が東京市麹町区永田町に設置。
1941年12月: 陸軍機甲本部が東京市牛込区市谷本村町に移転。
1945年11月: 敗戦による陸軍解体に伴い、陸軍機甲本部が廃止。

所轄学校

陸軍機甲本部は、以下の学校を所轄していました。

千葉陸軍[[戦車学校]]
公主嶺陸軍戦車学校（後に四平陸軍[[戦車学校]]と改称）
陸軍[[騎兵学校]]
陸軍機甲整備学校
陸軍少年戦車兵学校

歴代本部長

陸軍機甲本部の歴代本部長は以下の通りです。

吉田悳 中将: 1941年4月10日 - 1942年6月26日
本多政材 中将: 1942年6月26日 - 1943年3月11日
桜井省三 中将: 1943年3月11日 - 1944年1月7日
西原一策 中将: 1944年1月7日 - 1945年1月23日（在職中に死去）
野田謙吾 中将: 1945年3月1日 - 1945年4月7日（教育総監部本部長兼職）
原守 中将: 1945年4月7日 - 1945年5月5日（教育総監部本部長兼職）
寺田雅雄 中将: 1945年5月5日 -

まとめ

陸軍機甲本部は、第二次世界大戦中に陸軍の機械化を推進するために設立された重要な機関でした。短い期間ではありましたが、機甲部隊の教育、編成、技術開発において重要な役割を果たし、日本の陸軍近代化に貢献しました。

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』初版、東京大学出版会、1991年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧 第一巻』芙蓉書房出版、1993年。
原剛・安岡昭男編『日本陸海軍事典コンパクト版（上）』新人物往来社、2003年。
防衛庁防衛研修所戦史室『陸軍軍戦備』朝雲新聞社〈戦史叢書〉、1979年。
大久保弘一『陸軍読本』日本評論社、1938年。（国立国会図書館デジタル化資料）

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