吉田利勝

吉田利勝九段：長くB級2組に在籍した実力派棋士の軌跡

吉田利勝（よしだ としかつ）は、1933年7月3日生まれ、2021年5月23日没の将棋棋士です。1957年10月にプロ入りし、1992年に引退しました。花村元司九段門下で、棋士番号は75。愛知県名古屋市出身です。

棋歴：B級2組での長期在籍と、羽生善治竜王との対戦

プロ入り後は順調に昇級を重ね、1958年度の第13期順位戦C級1組で11勝3敗の好成績を収め、五段に昇段しました。しかし、翌年は病気により休場。その後も順位戦で活躍し、1969年度の第24期C級1組順位戦では11勝1敗の圧倒的な成績でB級2組へ昇級、六段に昇段しました。

しかし、吉田九段はその後22年間もの長きに渡りB級2組に在籍することとなります。この間、1972年度の王将戦では予選を突破し、王将リーグに参加する快挙を成し遂げました。リーグでは1勝を挙げましたが、二上達也、中原誠、米長邦雄といった当時のトップ棋士には敗れ、リーグ残留は叶いませんでした。

1975年度後期には棋聖戦で活躍し、挑戦者決定戦まで勝ち進みましたが、惜しくも二上達也に敗れ、タイトル挑戦はなりませんでした。また、同年度の早指し将棋選手権ではベスト4入りを果たしています。

そして、1990年6月29日、第49期B級2組順位戦2回戦で、当時竜王の羽生善治を破るという大きな金星を挙げました。後手番で指された横歩取りの将棋は、羽生善治の昇級を阻む一局となりました。しかし、翌1991年度の第50期B級2組順位戦では1勝9敗と振るわず、降級点が付く結果となり、この年を最後に現役を引退しました。

棋風：攻めの姿勢を貫いた居飛車党

吉田九段の棋風は、相掛かり、角換わり、矢倉などを中心とした居飛車党でした。しかし、時折四間飛車も用いるなど、柔軟な将棋を指すこともありました。その特徴は、駒を積極的に前に進めて攻めるスタイルで、一度攻めに出ると、容赦なく相手を攻め倒す迫力がありました。

日本将棋連盟への貢献

棋士としての活動以外にも、吉田九段は「将棋年鑑」の編集主幹や日本将棋連盟の経理部長を長く務めるなど、将棋界の発展に大きく貢献しました。

昇段履歴と主な成績

1951年3級からスタートし、1957年10月1日に四段でプロ入り。その後順調に昇段を重ね、1992年3月に引退。引退後、1999年4月には八段に昇段しました。通算成績は389勝513敗です。

著書

『将棋入門から初段まで - 新しい基本戦法 - 』（永岡書店）

吉田利勝九段は、B級2組というクラスに長く在籍しながらも、持ち前の攻撃的な将棋で多くのファンを魅了しました。羽生善治竜王を破った一局は、彼の将棋人生における大きな輝きの一つと言えるでしょう。棋士として、そして将棋連盟の職員として、将棋界に多大な貢献をした吉田利勝九段の功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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