吉田千秋 (写真家)

吉田千秋：歌舞伎写真の世界を切り開いた写真家

吉田千秋（よしだ ちあき）は、20世紀後半に歌舞伎の舞台写真を中心に活躍した写真家です。1918年に兵庫県で生まれ、2007年に亡くなるまで、そのレンズを通して数多くの歌舞伎役者や舞台の魅力を捉え、後世に伝えました。

木村伊兵衛への師事と松竹との出会い

写真家としての吉田千秋のキャリアは、1938年に木村伊兵衛に師事したことから始まりました。木村伊兵衛は、日本のドキュメンタリー写真の先駆者であり、吉田千秋は彼の指導のもとで写真の基礎を学びました。新聞社勤務を経て、1950年、吉田千秋は松竹の永山武臣（のち社長）との出会いを果たします。この出会いが、彼の人生を大きく変えるきっかけとなりました。永山武臣のすすめで歌舞伎の写真を撮り始め、その才能を開花させていったのです。

歌舞伎座との深い関わり

1951年の歌舞伎座再開場後、吉田千秋は毎月の舞台写真の撮影を担当するようになります。さらに、歌舞伎座の筋書編集にも携わるなど、歌舞伎座とは非常に深い関わりを持つようになりました。彼の写真は、舞台の臨場感や役者の表情を鮮やかに捉え、多くの歌舞伎ファンを魅了しました。また、筋書の編集を通して、歌舞伎の歴史や文化を伝える役割も果たしました。

著書に見る歌舞伎への情熱

吉田千秋は、写真家としてだけでなく、歌舞伎に関する多くの書籍にも携わっています。これらの書籍は、歌舞伎の魅力を多角的に伝えるものであり、彼の歌舞伎への深い愛情が感じられます。

戸板康二『歌舞伎』保育社 カラーブックス 1965
河竹登志夫『歌舞伎のいのち』淡交社 1969
戸板康二『百人の舞台俳優』淡交社 1969
『市川団十郎』前田青邨等文 吉田,後藤重弘,梅村豊写真 淡交社 1970
戸板康二『カラー歌舞伎の魅力』淡交社 1973
戸板康二『女形』駸々堂出版 駸々堂ユニコンカラー双書 1975
『歌舞伎のみかた』保育社 カラーブックス 1977
『歌舞伎役者の世界 吉田千秋写真集』日本放送出版協会 1979
戸板康二『写真歌舞伎歳時記 春夏/秋冬』講談社文庫 1980-81
野口達二『歌舞伎再見』岩波グラフィックス 1983
『写真忠臣蔵』保育社 カラーブックス 1983
『上方の女形と近松 中村扇雀写真集』向陽書房 1984
津田類『女方 歌舞伎のヒロインたち』朝日新聞社 1988
『歌舞伎いろは絵草紙 ヴィジュアル版』講談社 1991
『山川静夫の歌舞伎十八選 これだけは見てほしい平成の歌舞伎』講談社カルチャーブックス 1991
金森和子『歌舞伎ファッション』朝日新聞社 1993
* 『歌舞伎座 吉田千秋写真集 歌舞伎四百年記念』朝日新聞社 2003

これらの著書を通じて、吉田千秋は歌舞伎の奥深さや美しさを広く伝え、多くの人々に歌舞伎への関心を抱かせました。

吉田千秋は、歌舞伎写真の世界において、その名を深く刻んだ写真家です。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、歌舞伎の魅力を伝えています。

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