吉田城 (三河国)

吉田城：三河地方を彩る歴史の城

愛知県豊橋市にある吉田城は、戦国時代から江戸時代にかけて、三河地方において重要な役割を担った城郭です。その歴史は古く、16世紀初頭、今川氏親の命を受けた牧野古白が、現在の豊橋公園付近に今橋城として築城したのが始まりとされています。当初は、西三河で勢力を伸ばす松平氏や、渥美郡を掌握する戸田氏を牽制する目的で築かれたと考えられています。

激動の戦国時代

築城後、吉田城は今川氏、松平氏、戸田氏など様々な勢力の手を転々と渡ります。松平清康の攻略によって松平氏の支配下に入った時期もありましたが、その後も戸田氏との争いが絶えず、今川氏、松平氏（徳川氏）による支配が入れ替わります。桶狭間の戦い後、徳川家康の支配下となり、家康の重臣である酒井忠次が城代を務めました。酒井忠次は、武田氏との戦いや遠江侵攻において重要な役割を果たしました。

近世城郭としての発展

天正18年（1590年）、徳川家康の関東移封に伴い、池田輝政が15万2千石で東三河を領有し、吉田城の大規模な改築に着手しました。吉田大橋の架け替えなども行われましたが、輝政は慶長6年（1601年）に播州姫路に移封されたため、改築は完成せずに終わりました。

江戸時代とその後

江戸時代には、吉田城は三河吉田藩の藩庁として機能しました。東海道の要衝に位置していたため、幕府から信頼の厚い譜代大名が藩主に任命されることが多く、「出世城」とも呼ばれていました。しかし、藩主の交代は頻繁に行われました。

明治維新後、吉田城は豊橋城と改称され、明治4年には兵部省の管轄となりました。明治6年の火災で多くの建物が焼失し、その後は名古屋鎮台の豊橋分営所、歩兵第18連隊などが置かれました。太平洋戦争後は、本丸の一部を除き豊橋公園として整備され、昭和29年には隅櫓（鉄櫓）が模擬再建されました。現在、鉄櫓は資料館として利用されています。

吉田城の構造と遺構

吉田城は、豊川と朝倉川の合流地点近くに位置する平城です。豊川が自然の堀の役割を果たす地形を生かした堅固な城郭でした。戦国時代の吉田城の構造は不明な点も多いですが、発掘調査などから、東西300ｍ南北240ｍの規模で複数の曲輪から構成されていたと推測されています。池田氏の改築によって、近世城郭としての縄張りが整えられました。

本丸を中心に、二の丸、三の丸、外郭（藩士屋敷）が配置され、総堀で囲まれた半輪郭式の城郭でした。本丸には4基の隅櫓があり、そのうち北西の鉄櫓は天守相当の役割を果たしていたと考えられています。現在も、石垣、土塁、堀などの遺構が残っており、その一部は豊橋市指定史跡に指定されています。

吉田城と周辺

吉田城は、東海道の重要な拠点として栄え、歌川広重の『東海道五十三次』にも描かれています。吉田城と吉田大橋が同時に描かれているのは、東海道の城郭では吉田と岡崎だけという貴重な記録です。また、吉田城の御殿と城門の一部は、静岡県湖西市の鷲津にある本興寺に移築されたと伝えられています。

現在、吉田城跡は豊橋公園として整備され、多くの人が訪れる憩いの場となっています。鉄櫓をはじめとする遺構、そしてその周辺の歴史的な建造物や自然環境は、人々に豊橋の歴史と文化を伝えています。吉田城は、歴史と自然が調和した、魅力的な観光スポットです。

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