吉田芳幸

吉田芳幸

吉田芳幸氏は、1944年に生まれ、日本の暴力団社会でその名を馳せた後、キリスト教に回心し、伝道者として新たな人生を歩んでいる人物です。その経歴は、波乱に満ちた極道の世界から、信仰に根差した奉仕の道へと劇的に転換した軌跡を示しています。

極道としての日々

後の東大阪市となる布施市で生を受けた吉田氏は、若くして暴力団の道に進みます。大阪を拠点とした松田組傘下の村田組系大日本正義団に身を置き、初代会長であった実兄を支えながら、組織内で大きな影響力を持つようになります。一説には、当時の日本の覚醒剤流通量の大部分を掌握していたとも言われ、その活動を通じて若くして莫大な財を築き、23歳という若さで豪邸を構えるほどでした。

しかし、1975年、彼の人生は激変します。大阪・日本橋の路上で、実兄であり大日本正義団初代会長であった吉田芳弘氏が、対立する山口組系佐々木組の組員によって射殺されたのです。この事件を受け、吉田氏は兄の後を継ぎ、組織の二代目会長に就任します。

二代目会長となった彼は、兄の仇である山口組三代目組長・田岡一雄氏への報復を決意します。3年もの歳月をかけて周到な計画を練り、田岡氏が頻繁に利用していた京都のナイトクラブ「ベラミ」周辺に部下を潜入させて詳細な情報を集め、実行拠点となるマンションを借りるなど、周到な準備を進めました。そして1978年7月11日、35歳の時、彼が手配したヒットマンである鳴海清が田岡組長に対し発砲するに至ります（いわゆるベラミ事件）。田岡組長は一命を取り留めたものの、この事件により吉田氏と鳴海は警察そして山口組からの報復を逃れるため、長く潜伏生活を送ることになります。潜伏中、鳴海は気晴らしに出かけた先で行方不明となり、後に六甲山中で無惨な姿で発見されました。

吉田氏は事件から約3ヶ月後の10月、神戸で警察に逮捕されます。1979年7月5日、彼は鳴海を匿った犯人蔵匿及び証拠隠滅などの罪により、懲役5年の実刑判決を受け、札幌刑務所で5年間の独房生活を送ることになります。服役中、山口組系の受刑者から幾度となく命を狙われる危険な状況に置かれましたが、1984年に発生した山口組と一和会の激しい抗争（山一抗争）によって状況が変わり、難を逃れたとされています。

信仰への回心と新たな出発

1984年に出所した吉田氏は、6年ぶりに再会したクリスチャンの韓国人女性、李宝倍（後に吉田美宝子となる）と結婚します。妻の存在は、彼のその後の人生に大きな影響を与えました。結婚後、妻の影響を受けて聖書に触れるようになり、1990年、46歳の時に自らもキリスト教の洗礼を受け、長年身を置いていた暴力団から完全に引退することを決意します。暴力団を辞めた後、妻の助言に従い、全く畑違いである八百屋での仕事に就き、社会生活を再構築し始めます。

その後、中学時代の同級生の紹介で土地売買の仲介業に携わる機会を得て、不動産業を始めます。リゾート開発などを手掛けるようになり、ビジネスの世界でも新たな道を切り開いていきました。

「ミッション・バラバ」での活動

元暴力団員である金沢泰裕氏の紹介で、アーサー・ホーランド氏と出会ったことが、吉田氏の伝道活動の大きなきっかけとなります。1993年末、吉田氏は鈴木啓之氏、金沢氏、井上薫氏、中島哲夫氏ら、自身と同じく元暴力団員であった7名と、ホーランド氏、松沢秀章氏ら牧師と共に、聖書研究会「ヤクザ・フェローシップ」を発足させました。この集まりは後に「ミッション・バラバ」と名称を変え、暴力団関係者や社会の片隅に追いやられた人々への伝道と社会復帰支援を目的とする団体として活動を展開していきます。

吉田氏はミッション・バラバの中心メンバーとして、国内外で活発な伝道活動を行うようになります。1994年11月にはアメリカ伝道旅行に参加するなど、精力的に活動を続け、自らの壮絶な過去とキリストへの回心、そして人生の変革について証しすることで、多くの人々に希望を与えています。

現在の活動

現在、吉田芳幸氏は大阪府東大阪市小阪にあるアンテオケ国際神学校・神学院の理事長を務め、次世代の伝道者の育成に携わっています。また、ベタニヤチャーチの長老として、教会での活動にも深く関わっています。暴力団組織の幹部から一転、キリスト教の指導者となった彼の存在は、多くの人々に驚きと感動を与え、罪や過去からの解放、そして信仰による再生の可能性を示し続けています。

もう一度検索