ミッション・バラバ

ミッション・バラバ（Mission Barabbas）は、独自の背景を持つ日本のキリスト教伝道団体として知られています。その活動の中心を担うのは、かつて暴力団組織に身を置いていた人々や、彼らを信仰へと導いた牧師たちです。彼らはキリスト教の教えに基づき、自らの人生を変え、その経験を通じて同じような境遇にある人々に希望を伝えようとしています。

この団体の起源は、1993年の年末に遡ります。国際的なキリスト教伝道団体、キャンパス・クルセード・フォー・クライストの宣教師であったアーサー・ホーランド氏の呼びかけに応じた、元暴力団組員七名と牧師二名の合計九名が、当初「ヤクザ・フェローシップ」という名の聖書研究会を立ち上げたのが始まりです。当時は、独学では聖書の内容を十分に理解することが難しかったため、集まって学び合う必要性を感じていたと言われます。活動が進む中で、彼らは新約聖書に登場する囚人バラバにちなんで組織名を「ミッション・バラバ」と改めました。バラバは、本来ならば十字架にかけられるはずだったにもかかわらず、イエス・キリストと引き換えに民衆によって釈放された人物です。この名称には、罪からの解放、そして新しい人生への希望といった、彼ら自身の経験と重なる深い意味が込められています。

ミッション・バラバは、名称変更とともに伝道団体として本格的な活動を開始しました。特に注目すべきは、設立間もない1994年に敢行された北米伝道旅行です。彼らはアメリカ合衆国のワシントン州シアトルやカリフォルニア州サンタバーバラ、ロサンゼルス、そしてカナダのバンクーバーといった主要都市を訪れ、現地の教会や集会で講演を行いました。ロサンゼルスのリトル東京にある日系人教会での講演なども含まれます。彼らの異色の経歴と、そこから生まれた信仰に基づくメッセージは、聴衆に強い印象を与えました。

この北米での活動は、海を越えて日本のメディアでも大きく報じられました。アメリカの日系人コミュニティ向け新聞である『オクデール・リーダー』や『羅府新報』に取り上げられたことがきっかけとなり、日本の時事通信や共同通信といった主要通信社を通じて、毎日新聞、報知新聞、日刊スポーツ、中日新聞など、国内の様々な新聞で彼らの活動が紹介されました。このように、ミッション・バラバはその初期から国内外で広く認知され、社会的な注目を集める存在となりました。

さらに、彼らの活動はメディアを通じて多くの人々に感銘を与え続けました。2000年には、ミッション・バラバのメンバーたちの実話に基づいた映画『親分はイエス様』が製作され、俳優・渡瀬恒彦氏の主演で公開されました。この映画は、元組員たちが信仰によって過去を乗り越え、新たな道を歩む姿を描き出し、一般社会においてもミッション・バラバの存在と活動に対する理解を深める一助となりました。また、2007年からは日本伝道隊の宣教師であるヒュー・ブラウン氏が相談役として団体の活動をサポートしています。

設立当初からの主要メンバーには、鈴木啓之氏（元・酒梅組系組員、現シロアム・キリスト教会牧師）、高原芳郎氏（元・本多会系組員、故人）、井上薫氏（元・源清田連合会）、金沢泰裕氏（元・山口組系組員、現イエス教日本世界宣教会弟子教会牧師）、吉田芳幸氏（元・大日本正義団2代目組長、現アンテオケ国際神学校・神学院理事長）、中島哲夫氏（元・住吉会相談役）、真島創一氏（元・住吉会系組員）、信田和富氏（元・東亜友愛会系組員、故人）といった元暴力団関係者が名を連ねています。加えて、設立を呼びかけたアーサー・ホーランド氏（キャンパス・クルセード・フォー・クライスト宣教師など）や、松沢秀章氏（基督兄弟団成増教会補教師、故人）といった牧師たちが活動を支えました。これらのメンバーは、それぞれが壮絶な過去を持ちながらも信仰によって立ち直り、現在も鈴木氏や金沢氏が代表や牧師として、吉田氏が神学校の理事長としてなど、様々な形で伝道や社会貢献に携わっています。

ミッション・バラバは、過去に困難を抱えた人々が信仰を通じて立ち直り、社会の中で新たな役割を見出すことができるという、希望に満ちたメッセージを発信し続けています。彼らの活動は、単なる宗教的な伝道に留まらず、社会からの孤立や困難に直面する人々への具体的な支援や、回復への道を示す重要な取り組みとして、今後も注目されていくことでしょう。

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