吉田豊信 (姫路市長)

吉田豊信（よしだ とよのぶ）

吉田豊信は、1911年（明治44年）に兵庫県飾磨郡白浜村（現在の姫路市）で生まれ、1984年（昭和59年）に73歳で亡くなった日本の政治家です。彼は、姫路市長を4期16年にわたり務め、その手腕によって姫路市の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと初期のキャリア

旧制姫路中学校を卒業後、東京帝国大学法学部に進学。在学中に高等試験と内務省幹部採用試験に合格し、1934年（昭和9年）に内務省に入省しました。大阪府や岩手県での勤務を経て、1938年（昭和13年）には陸軍に召集され、姫路の第10師団歩兵第39連隊に入隊しました。その後、甲種幹部候補生採用試験に合格し、陸軍経理学校での教育を経て、陸軍主計少尉に任官。第10師団経理部で物資統制主任将校を務めました。

1942年（昭和17年）2月に召集解除となり内務省に復帰。福岡県、愛知県での勤務を経て、終戦後は厚生省佐世保引揚援護局総務部長、愛知県教育部長などを歴任しました。内務省解体後の1947年（昭和22年）5月からは兵庫県庁に勤務し、農地部長、商工部長、人事委員長、農林部長、出納長といった要職を歴任しました。

姫路市長としての活躍

1966年（昭和41年）6月1日、兵庫県庁を退職。そのわずか3日後の6月4日には、「最近の石見市政には憂慮すべきものが多い」として姫路市長選挙への立候補を表明しました。1967年（昭和42年）4月28日の姫路市長選挙では、日本社会党や革新勢力など幅広い層からの支持を受け、現職の石見元秀を大差で破り初当選を果たしました。

市長就任後、吉田はまず前市長の負の遺産とも言える市政の立て直しに着手しました。市財政の再建に取り組み、姫路モノレール事業の見直し（後に廃止）、市立学校の整備、そして当時深刻な社会問題であった公害問題への対応など、数々の難題に立ち向かいました。都市開発の分野では、市道十二所前線の開通（国道2号の一方通行化）や、新都市計画法に基づく市街化区域・市街化調整区域の設定など、都市基盤の整備にも尽力しました。

2期目には、公害問題・環境問題への対応をさらに進め、姫路市文化センターの建設、姫路バイパスの暫定供用を実現。3期目には、臨海部の大手企業との災害防止協定を締結し、現在の市庁舎を建設、旧庁舎を姫路市立美術館として転用しました。また、国鉄高架化基本構想を発表し体制づくりを進めましたが、この構想は吉田の退任後に実現することとなりました。

1983年（昭和58年）の姫路市長選挙では5選を目指す意欲を見せていましたが、病状が悪化し立候補を断念。任期満了をもって市長職を退任しました。

その後

1984年（昭和59年）7月16日、吉田豊信は姫路市名誉市民の称号を贈られました。しかし、そのわずか5日後の7月21日に生涯を閉じました。吉田の功績は、姫路市民の記憶に深く刻まれています。

吉田豊信は、激動の時代の中で、地方自治の発展に尽くした人物として、その名を歴史に刻んでいます。

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