吉田隆長

吉田 隆長（よしだ たかなが）

吉田隆長は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した公卿であり、その経歴は公家としての華やかな一面と、家族関係にまつわる複雑な側面を持ち合わせています。彼は藤原北家勧修寺流の吉田家に生まれ、権大納言・吉田経長の次男として知られています。官位は正三位と権中納言を歴任し、政治の舞台で重要な役割を果たしました。

経歴の歩み

隆長は、皇太子尊治親王の東宮亮として仕え、親王が後醍醐天皇として即位した際の文保2年（1318年）に蔵人頭に抜擢され、その名が広まりました。さらに同年の8月には参議へと昇進し、文武両道で認められたことで公家社会でもその地位を確固たるものにしました。

ところが、元応2年（1320年）に権中納言に任ぜられた後、日吉大社の神人を禁獄したことで延暦寺からの抗議を受け、同年の9月には阿波権守に左遷されるという波乱万丈の経歴を辿りました。しかし、同年の12月には許されて再び京に戻ることができました。

元亨元年（1321年）7月、兄である定房が権大納言を辞職するのに伴い、民部卿に任じられますが、同3年の6月にはこの職も辞してしまいます。この頃、彼は有職故実や自身の家族の言行を記した『吉口伝』の編纂に取り組んでいました。しかし、正中2年（1325年）には官職を辞し、出家して覚源と名乗るようになります。

南北朝の時代

南北朝時代における隆長は、兄の養子である三男・藤長とともに京都で過ごしました。貞和4年/正平3年（1348年）には、藤長が新たに家号「甘露寺」を定め、南朝の正当性を巡って争いが生じたことが『園太暦』に記されています。彼は南朝に仕える定房の子、宗房との嫡流の地位を巡って対立があったことが象徴的です。

そして、貞和6年/正平5年（1350年）には、自身の余命が短いことを感じ取った隆長は『唯識論』を執筆し、その中で藤長以外の一門の者が北朝に仕官していることを嘆き、家名の存続を祈る気持ちを表現しました。あの月、彼は74歳でこの世を去りました。彼の死は公家社会に多くの影響を与え、家族や一族の運命にも重要な意味を持つ出来事として記憶されました。

系譜と家族

隆長は吉田経長と葉室定嗣の娘を父母に持ち、結婚相手については信増法印の娘とされており、その家系から多くの子女が誕生しています。彼の男子には吉田俊長や吉田房長がおり、また甘露寺藤長も隆長の男子として名前を連ねています。彼の家族構成は複雑であり、時代の変遷によりその立場や関係が変化していく様子が興味深いです。

隆長の生涯を通じて、その名は藤原家の歴史に刻まれ、後の世代へも影響を与えることになりました。彼の政治的な取り組みや文化的な活動は、当時の公家社会を理解する上でも重要な要素となっています。

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