園太暦

『園太暦』(えんたいりゃく)は、南北朝時代に活躍した公卿洞院公賢(とういんきんかた)によって著された日記であり、『中園相国記』(なかぞのしょうこくき)とも呼ばれます。洞院公賢は「中園太政大臣」と称されたほどの人物で、その日記は南北朝時代の歴史を研究する上で欠かせない基本史料とされています。

洞院公賢は、太政大臣という朝廷の最高位の役職に就き、また有職故実(ゆうそくこじつ:朝廷や公家の儀式、制度、慣習などに関する知識)にも精通していました。そのため、天皇や他の公卿たちからの相談も多く、当時の朝廷の動向について詳細な記録を残しています。『園太暦』には、1311年(延慶4年)2月から1360年延文5年)3月までの約50年間の出来事が、123巻にわたって記されています。しかし、その大半は散逸しており、現在では一部の自筆原本と、甘露寺親長(かんろじちかなが)や三条西実隆(さんじょうにしさねたか)による抄本が残るのみです。自筆原本の一部は重要文化財に指定されています。

洞院公賢の死後、子孫の公数(きんかず)の代に家門が断絶しましたが、公数は生活のために家の記録を売却していました。その結果、『園太暦』も1482年(文明14年)に中院通秀(なかのいんみちひで)に譲渡されました。中院通秀の日記『十輪院入道内府記』によれば、当時の『園太暦』の現存状況は以下の通りでした。

1311年(延慶4年)2、3月
1344年(康永3年)春、夏、秋
1345年(貞和元年)春、夏、秋、10月、11月
1346年(貞和2年)春、4月、5月、秋、冬
1347年(貞和3年)四季
1348年(貞和4年)四季
1349年(貞和5年)春、夏、秋、11月、12月
1350年(観応元年)四季
1351年(観応2年)四季
1352年(文和元年)四季
1353年(文和2年)春、夏、秋
1354年(文和3年)冬
1355年(文和4年)四季
1356年(延文元年)四季
1357年(延文2年)四季
1358年(延文3年)春、夏、秋
1359年(延文4年)四季
1360年延文5年)春(内1巻は公賢の弟である公敏(きんとし)の『公敏卿記』)

『園太暦』は、その重要性から、1930~40年代に大洋社から4巻までが出版されました。その後、1970年代以降には、史料纂集の一部として全8巻が刊行され、より多くの人々が閲覧できる環境が整いました。

現在では、研究者だけでなく、歴史に関心のある一般の人々にとっても、南北朝時代を理解するための重要な資料となっています。

参考文献
林屋辰三郎『内乱のなかの貴族: 南北朝と「園太暦」の世界』(角川選書、1991年)
太田藤四郎編纂『園太暦』太洋社、1936-1940年(国立国会図書館デジタルコレクション)
斎木一馬ほか校訂『園太暦』(史料纂集)続群書類従完成会、1971-1986年

外部リンク
e国宝 園太暦 自筆本 応長元年二月三日

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