吉良氏朝

吉良氏朝について

吉良氏朝（きら うじとも、1543年 - 1603年）は、戦国時代から安土桃山時代に活躍した武将で、世田谷城の城主です。初名は頼貞で、学翁斎と号していました。彼は吉良頼康の養子として知られ、その血筋は複雑で、北条氏との関係も深いものでした。

氏朝の父は遠江今川氏に仕官していた堀越六郎であり、母は北条氏綱の娘、崎姫でした。また、妻は北条幻庵の娘、鶴松院であり、子として蒔田頼久が挙げられます。これにより、氏朝は北条家との政治的関係を密に築いていました。生年については1542年説もあるが、一般に1543年が有力です。堀越六郎は河東一乱の際に北条氏に味方して今川氏に反旗を翻したため、氏朝の家族は北条氏に依存して伊豆国に移ったと考えられています。

彼は1546年に左兵衛佐に任じられ、同年末に従四位下に叙任されました。1560年に世田谷城主を継承し、北条氏康の娘と結婚しました。しかし最近の研究では、氏康の実娘ではなく、氏康の従妹にあたる女性が氏朝の妻であったとされることが多いです。

吉良家は、北条氏に従属しているものの、その立場は家臣というよりも食客のように高く評価されていました。彼らは北条氏から特別扱いを受け、吉良家独自の印判を使用することが許可されていました。北条氏康からの一字拝領もあり、氏朝は決して普通の家臣というわけではありませんでした。しかし、時間とともに、北条氏が吉良家に対する指示を行うようになり、その結果、徐々に吉良家の内部が解体されていきました。

氏朝の代に入ると、吉良家は北条家の家臣として正式に取り込まれ、軍役などの義務も果たすようになりました。ただし、吉良家が完全に北条家に組み込まれたのかについては意見が分かれています。一部歴史家は、吉良家は北条家の影響下に置かれたものの、独自の存在感を保ち続けていたと評価しています。

氏朝の入嗣に関しては、北条氏との結びつきを重視する見解が多く見られ、その評価には様々な意見があります。荻野三七郎は北条氏が吉良氏に強制介入したとし、黒田基樹は北条氏が吉良氏の所領と家臣を取り込んでいったと指摘しています。一方で、谷口雄太は吉良氏が権威や文化を保ち続けようとしたとしています。彼の家系は遠江今川氏と結びついており、これは吉良家の持つ権威を引き継ぐための試みと解釈できます。

天正18年、小田原征伐に参加した氏朝は上総国に逃れた後、関東に入った徳川家康に仕官し、世田谷で1120石の所領を得ました。その後、所領を返上して隠居し、慶長8年に61歳（または62歳）で亡くなりました。彼の死は、戦国時代の武士の舞台における一時代の終焉を象徴するものであると言えるでしょう。

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