吉野正敏

吉野正敏：気候学のパイオニアとその足跡

吉野正敏博士（1928年1月1日-2017年7月4日）は、日本の地理学、気候学、気象学に多大な貢献を果たした学者です。東京都出身の彼は、東京文理科大学地学科地理学専攻を卒業後、東京教育大学大学院に進学。1961年には「風に及ぼす小地形の影響」という論文で理学博士号を取得しました。この研究は、彼の後の気候学研究の基盤となりました。

助手として東京教育大学に勤務した後、法政大学助教授、教授を経て、1974年には筑波大学教授に就任。1992年に同大学を定年退官し名誉教授となりました。その後も愛知大学教授として教鞭を執り続け、その活動は晩年まで続きました。

国際的な研究活動にも積極的に取り組み、1961年から1963年にはドイツのボン大学で研究奨学生として過ごしました。また、1967年から1968年にはハイデルベルク大学客員教授を務めるなど、海外での研究活動も盛んに行っています。2001年から2010年にかけては、国際連合大学の上席学術顧問を務め、国際的な舞台でその知見を活かしました。

吉野博士の研究は、気候学、特に小気候や局地気象、そして風の影響に焦点を当てたものでした。その研究成果は、数々の著書や論文に結実しています。『小気候 局地気象学序説』、『ヨーロッパ気候』、『風の世界』、『風の博物誌』など、彼の著作は気候学研究の重要な参考文献として広く活用されています。

さらに、彼は気候と歴史、気候と人間の生活との関わりにも深い関心を持ち、その研究成果は『歴史に気候を読む』、『古代日本の気候と人びと』といった著書に反映されています。これらの著作は、気候学を専門外の人々にも分かりやすく伝えることに成功し、気候変動問題への関心を高める役割を果たしました。

彼の業績は高く評価され、数々の賞を受賞しています。日本気象学会藤原賞、インド農業気象学会賞、アレキサンダー・フォン・フンボルト研究賞、国際地理学連合栄誉賞、国際都市気候学会リューク・ハウォード賞など、国内外からその功績が認められました。これらの受賞は、吉野博士の気候学研究における卓越した貢献を証明するものです。

吉野正敏博士の生涯は、学問への飽くなき探究心と、国際的な視野を持つ気候学者の姿を私たちに示しています。彼の研究は、現代の気候変動問題を考える上で、非常に重要な示唆を与えてくれます。彼の功績は、未来の気候学研究者にとって、大きな指針となるでしょう。

主な著書:

『小気候 局地気象学序説』（地人書館）
『ヨーロッパ気候』（古今書院）
『気候学』（地人書館）
『世界の気候・日本の気候』（朝倉書店）
『風の世界』（東京大学出版会）
『風の博物誌』（丸善）
『気候地名をさぐる』（学生社、吉川弘文館）
『中国の沙漠化』（大明堂）
『風と人びと』（東京大学出版会）
『気候地名集成』（古今書院）
『歴史に気候を読む』（学生社）
『気候学の歴史 古代から現代まで』（古今書院）
『世界の風・日本の風』（成山堂書店）
『地球温暖化時代の異常気象』（成山堂書店）
『古代日本の気候と人びと』（学生社）
『極端化する気候と生活 温暖化と生きる』（古今書院）

主な受賞歴:

藤原賞（日本気象学会）
インド農業気象学会賞
アレキサンダー・フォン・フンボルト研究賞
国際地理学連合栄誉賞
* 国際都市気候学会リューク・ハウォード賞

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