名人 (将棋)

将棋における名人の歴史

将棋界において「名人」という称号は、棋士の最高位を示します。その歴史は非常に長く、起源は1612年に遡ります。当初、江戸時代に名人となる者は家元制に基づいており、名声を持つ棋士がその地位を占めていましたが、昭和時代に入るとその構造が大きく変わります。

名人の起源

「名人」の称号は、織田信長が任命した囲碁の名人である本因坊算砂に由来すると言われています。算砂は徳川幕府の初代囲碁将棋統括責任者となり、この称号が様々な場面で使われるようになりました。しかし、鎌倉時代にはすでに囲碁や雙六の名人に関する記述が存在したことも示されています（増川宏一『将棋II』より）。

江戸時代の名人制

初めて将棋とし名が知られるようになったのは1612年、初代大橋宗桂の時です。彼は幕府から俸禄を賜り、将棋所を任されました。これより名人は九段を示し、名のある棋士たちがこの称号を競い合うことになるのです。この時代、名人は様々な家系から選ばれ、家元制が確立されました。

名人位は、江戸時代の社会情勢が変わると共にその存在意義を失っていきました。明治から大正時代にかけては年功に基づく名誉称号として名人が称えられましたが、棋界の実力が重視されるようになった昭和に入ると、実力制名人戦へと移行しました。

実力制名人戦の導入

1935年、名人の選出方法が実力主義へと変わり、名人戦が始まりました。この新たな名人戦では成果が報われ、初の実力制名人として木村義雄が誕生します。1938年には家元制名人と実力制名人の境界が明確に分かれ、名人はその名を継承することとなりました。

名人位の変遷

現代においては、名人戦の勝者が称号を持ち、タイトル戦の一つとして位置付けられています。また、前名人の存在も特筆すべきポイントで、過去の名人はその実績により「前名人」として名乗ることができました。しかしこの制度も徐々に変わり、前名人の称号は2020年に廃止されました。

名人位の流れの中で、通算5期名人に与えられる「永世名人」の制度も重要であり、これは特殊な称号として棋界に位置付けられています。永世名人の資格を得た棋士は、引退後にその称号を襲位します。

贈名人と名誉名人

将棋界には「贈名人」や「名誉名人」といった称号も存在します。これらは主にその業績や貢献を顕彰するために与えられるもので、現在も歴史的な意義を持つものとして知られています。特に贈名人として称えられた伊藤看寿や坂田三吉はその代表例です。

関西名人の存在

名人制度において、関西にも独自の名人と称される棋士たちが存在しました。これは当時の棋界が分裂状況にあったことを反映しています。関西名人は今では公式には認められていませんが、坂田三吉などはその名のもとに活動していました。

結論

将棋における名人は、単なる称号に留まらず、その背後には長い歴史と変遷があります。名人戦をはじめとした実力制度、贈名人や名誉名人など、名人に関する称号や制度は棋士たちの成績や実力を正確に反映するために作られてきました。これからも名人という称号は将棋界の中で特別な位置を占め続けることでしょう。

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