名立町

旧名立町は、かつて新潟県の南西部に位置していた自治体です。特に、県西部の西頸城郡の東端に位置し、日本海に面した地域でした。町は2005年1月1日、周辺の市町村と共に上越市に編入され、その自治体としての歴史に幕を閉じました。編入後は、従来の町域は上越市の地域自治区である「名立区」へと移行し、現在に至ります。平成12年（2000年）の国勢調査では、町民の約25.2%が隣接する上越市へ通勤しており、地域的な結びつきが強かったことが伺えます。

名立町は、変化に富んだ地形を持つ地域でした。主な山岳としては、不動山、大毛無山、そして三峰山が挙げられます。町の中央部を流れる名立川は、地域に豊かな水をもたらしていました。町が存続していた当時、その境を接していた自治体は、東から時計回りに上越市、新井市（現妙高市の一部）、中頸城郡の中郷村（現上越市の一部）、同じく中頸城郡の妙高村（現妙高市の一部）、そして西頸城郡の能生町（現糸魚川市の一部）でした。これらの自治体との交流は、町の発展にとって重要な要素でした。

名立町の歴史は、自然災害や人災など、厳しい出来事も刻んでいます。特に記憶されるべきは、1751年（寛延4年）に発生した「名立崩れ」と呼ばれる大規模な地すべり災害です。この災害により、406人もの尊い命が失われました。近代における町政の始まりは、1889年（明治22年）4月1日の町村制施行にさかのぼります。この時、名立小泊村、名立大町村、坪山村、赤ノ俣村の4つの村が合併し、初めて名立町が発足しました。しかし、その後の歴史の中で、再び悲劇に見舞われます。1949年（昭和24年）3月30日には、海岸に漂着した機雷が爆発する痛ましい事件が発生しました。駐在巡査が機雷を処理しようとした際に起きたこの爆発により、見物していた小中学生を中心に63人が死亡、36人が負傷し、さらに付近の家屋約100戸が損壊する大きな被害が出ました（名立機雷爆発事件）。その後、1955年（昭和30年）11月1日には、西頸城郡の名立村と合併し、新たに名立町が設置されました。そして、2005年（平成17年）1月1日、名立町は上越市に編入され、その自治体としての歴史に終止符を打ちました。最終期の町長は塚田隆敏氏でした（1988年12月14日から）。

名立町は、国内外の自治体との交流も行っていました。国内においては、長野県東御市（当時は北佐久郡北御牧村）と姉妹都市提携を結んでいました。町内には、名立小学校、宝田小学校、そして名立中学校があり、地域の子どもたちの教育を担っていました。交通網としては、JR北陸本線が町内を通り、名立駅が設置されていました。道路に関しては、主要幹線である国道8号が町域を縦断していました。高速道路のインターチェンジは町内にはありませんでしたが、隣接する上越市に北陸自動車道の名立谷浜インターチェンジがあり、車でのアクセスは比較的容易でした（約5分程度）。

日本海に面したその立地を活かし、名立町には多くの観光スポットがありました。代表的なものとしては、日本海を望む「シーサイドパーク名立」や、海の幸を楽しめる「うみてらす名立」が挙げられます。また、温泉施設である花立温泉「ろばた館」は、旅の疲れを癒す場所として親しまれました。歴史的な建造物としては、岩屋堂観音堂や、地域の守り神である雁田神社などがあり、地域の文化や信仰を今に伝えています。

このように、名立町は海と山に囲まれた自然豊かな地域でありながら、歴史的な出来事や、近隣都市との結びつきを持つ町でした。自治体としては姿を消しましたが、現在は上越市名立区として、その歴史と地域性を継承しています。

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