名金 (1915年の映画)

『名金』について

概要

『名金』（めいきん、英語: The Broken Coin）は、1915年に製作・公開されたアメリカのサイレント映画であり、ユニヴァーサル・フィルム・マニュファクチャリング・カンパニーによって制作されました。この作品は同社のシリアルフィルムとしては第5作目にあたり、日本では『マスター・キイ』の次に公開された連続活劇第2弾として知られています。また、日本では『金貨のかけら』という別名でも呼ばれています。

制作背景

本作はユニヴァーサルによる最初のシリアルフィルムである『國寶』に続くものです。監督はフランシス・フォード、脚本はグレイス・キュナードが担当しました。ノベライズはエマーソン・ハフの名でクレジットされていますが、実際にはフォードとキュナードが執筆したシナリオを基にしています。公開と同時に新聞連載されていたことも特徴的で、初回は1915年6月16日に全米で封切られました。

日本での公開

日本では、1915年10月10日に浅草公園六区・帝国館で公開されました。この公開は『マスター・キイ』から2週後というタイミングであり、国内初のシリアルフィルムとしての地位を得ることとなります。配給は、東京の播磨ユニヴァーサル商会が行い、この2作品はいずれも大ヒットしました。

反響と影響

公開当時、『名金』は強い反響を呼びました。特に、当時の慶應義塾生であった後の映画監督山本嘉次郎は、同級生からの薦めでこの映画を観に行き、影響を受けたと伝えられています。彼と友人は、映画を模倣した遊びとして「名金ゴッコ」に興じ、その後全国的に流行しました。これにより、映画は単なる娯楽に留まらず、社会文化にも影響を与える存在となったのです。

作品の評価

山本は、この映画を「これまでの単調な欧州映画と比較しても、波瀾に満ち、スピーディーなテンポが感じられ非常に面白い」と評価しました。また、映画史家の田中純一郎は、本作が日本で公開された連続劇の中で特に評判が高く、ノベライズ小説が翻訳出版されたこともその人気の証であると指摘しています。

技術面

本作は白黒映画であり、全22話から成る約440分の作品です。各話はおおよそ20分程度で構成されていますが、残念ながら現在では原版や上映用プリントは存在しないと考えられています。

スタッフとキャスト

• - 監督: フランシス・フォード
• - 脚本: グレイス・キュナード
• - 撮影: R・E・アイリッシュ、ヘンリー・マクガイア・スタンレイ
• - チーフ助監督: ジャック・フォード

主なキャストとしては、グレイス・キュナード、フランシス・フォード、エディ・ポーロ、ハリー・シャム、アーネスト・シールズなどが名を連ねています。彼らの演技が、このシリアル作品の魅力を一層引き立てています。

結論

『名金』は、早くから日本の映画文化に影響を与えた重要な作品となりました。そのストーリーと演出に魅了された観客たちが作り上げた「名金ゴッコ」は、現在でも語り継がれる遊びとなっています。この映画は、サイレント映画としての価値が失われることなく、歴史的な意義を有する映画として評価され続けるべきです。

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