名鉄サ50形電車

名鉄サ50形電車の歴史

名鉄サ50形電車（めいてつサ50がたでんしゃ）は、名古屋鉄道にかつて存在した付随車で、特異な経緯で製造された歴史を持ちます。この電車は、太平洋戦争が激化する中で資材が不足する状況において、輸送力の強化を図るために設計されました。具体的には、デワ1形電動貨車の部品を活用し、その単台車や台枠、手ブレーキなどを再利用して新たな客車を製造することが決定されました。

サ50形電車の車体は名古屋鉄道の新川工場で製造され、木造のシングルルーフ車体が採用されました。車両の全長は8.2メートルで、側面の窓配置はD7Dという独特な配置が特徴です。初めて製造されたのは1942年2月23日で、デワ1からデワ6にかけての機器を基にした6両が、この時に完成しました。これらの車両は各務原線に配置され、モ200形の動力車とともにM-T-T-M形式の編成を組み始めました。

その後1942年5月19日に、デワ7・デワ8の機器を用い、サ57およびサ58が製造されましたが、これらの車両も全て築港線に転属されました。その頃、各務原線ではモ1040形が新たな動力車として使われるようになりました。しかし、サ52、サ54、サ55、サ57の4両は戦災によって大きく損傷し、復旧されることなく1957年10月に廃車されました。残りの4両は築港線で一定期間運用されましたが、最終的に1957年10月に運用を終了し、廃車となりました。

名鉄サ50形電車は、戦争という特殊な時期に生まれたものであり、名古屋鉄道の車両史の中でも特に印象的な存在といえるでしょう。この電車は過去の鉄道技術や資材活用の面でも重要な位置を占めています。また、サ50形の製造は名古屋鉄道の鉄道車両の進化に寄与し、その後の設計や運用に影響を与えました。その独自の存在は、今後も多くの鉄道ファンや歴史的な研究において語り継がれることでしょう。

参考文献

• - 白井昭「名鉄初代デワ1形の図面を発見」『RAIL FAN』第650号、鉄道友の会、2006年12月、15 - 16頁。
• - 澤内一晃「名鉄デワ1形車歴表」『RAIL FAN』第650号、鉄道友の会、2006年12月、17頁。
• - 名鉄資料館「知られざる名鉄電車史1 郊外線草創期の車両 - デシ500形とその仲間たち」『鉄道ピクトリアル』第791号、電気車研究会、2007年7月、156 - 165頁。
• - 加藤久爾夫・渡辺肇「私鉄車両めぐり 名古屋鉄道」『鉄道ピクトリアル アーカイブスセレクション』第30号、電気車研究会、2015年1月、122 - 165頁。
• - 清水武、田中義人『名古屋鉄道車両史 上巻』アルファベータブックス、2019年。ISBN 978-4865988475。

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