名鉄トム800形貨車

名鉄トム800形貨車について

名鉄トム800形貨車は、かつて名古屋鉄道で使用されていた木造の無蓋貨車です。1920年代に製造されたこの貨車は、三河鉄道の15トン積木造無蓋車として登場しました。具体的には、1924年から1925年にかけて汽車製造と東洋車輌によって100両が製造されました。

歴史と改造

その後、昭和恐慌の影響により貨物の需要が減少したため、1927年から1931年の間に一部の車両に仕切りを設置する改造が行われ、これによって10トン積の有蓋車、ト710形へと改造されました。景気が回復した後には、元の15トン積に戻る車両も出てきました。このような柔軟な運用が可能だったのは、貨物需要の変動に即応するための工夫と言えます。

1941年に三河鉄道が名古屋鉄道に合併された際には、トム900形の90両とト710形の10両が名古屋鉄道に引き継がれ、形式はトム800形に改められました。ト710形の仕切りを取り外す改造も名古屋鉄道で継続され、1942年までに全てがトム900形として編入されました。

運用と変化

当初は三河線に限定されて使用されていましたが、戦後は東部線や西部線、再び三河線でも運用が行われるようになりました。1954年には名古屋鉄道が渥美線を豊橋鉄道へ譲渡し、その際に渥美線に配属されていた2両（トム899・トム900）が豊橋鉄道に移籍しました。残る98両は1955年までに、東部線に18両、西部線に10両、三河線に70両が在籍しており、全てが国鉄直通の貨車でした。この時期には、一部の貨車が瀬戸線に移動し、ほぼすべての路線での運用が行われるようになりました。

1960年代に入ると、名鉄トム800形の一部が私有貨車として日本通運刈谷支店に移管されることになりました。また、1965年には、トム805とトム806の2両が側板撤去などの改造を受け、チム60形長物車として新たな形式に変わりました。

終焉

国鉄の貨物列車の速度が引き上げられると、老朽化が進んでいたトム800形はその速度基準に合わなくなったため、名鉄の私有貨車制度が廃止されたのを受けて1968年に形式が消滅しました。その後、チム60形も1972年に形式消滅を迎えます。こうして名鉄トム800形は長い歴史を経て、その役目を終えることとなりました。

参考文献

• - 清水武・田中義人・澤内一晃『名古屋鉄道の貨物輸送』フォトパブリッシング、2021年。
• - 小寺幹久『名鉄電車ヒストリー』天夢人、2021年。

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