名鉄モ780形電車

名鉄モ780形電車の概要

名鉄モ780形電車は、名古屋鉄道（名鉄）にかつて在籍していた路面電車車両です。1997年から1998年にかけて7両が導入され、岐阜市内線および揖斐線で運行されていました。しかし、2005年3月末には路線が廃止され、すべての車両が豊橋鉄道に譲渡されました。この記事では、名鉄時代の運用状況や譲渡後の変化について詳しく述べます。

導入経緯

モ780形電車が導入された岐阜市内線と揖斐線は、岐阜県と周辺地域を結ぶ重要な路線でした。1967年からこれらの路線間で直通列車の運行が開始され、1987年には新造の連接車モ770形が投入されました。この新型車両の導入により、旧型車両の置き換えが進められましたが、依然として古い車両が使用されていたため、利便性向上を目指して本形式が設計されました。

1997年の4月1日に4両が初めて登場し、1998年の4月1日には残りの3両が投入されました。これらの車両は日本車輌製造によって製造されました。

車両の構造

モ780形は全鋼製の二軸ボギー車で、最大長は14.53メートル、幅は2.1メートル、高さは3.11メートルです。自重は19.4トンで、通常の路面電車の運行に適した設計がなされています。また、連結器を装備しており、混雑時には連結運転も行えます。しかし、急曲線の多い岐阜市内線では貫通幌が設置できず、ワンマン運転には制約が生じていました。

車体は軽量化が図られており、プレス鋼板やステンレス鋼板を用いた構造です。前面には大型の窓と方向幕が装備されており、角型の前照灯も配置されています。ドアは6箇所あり、乗降の利便性を考慮して配置されています。

車内の設計

内装はクリーム色系統とワインレッドで統一され、重厚感と開放感を持たせるよう工夫されています。長椅子形式の座席が配置され、最大定員は64人で、混雑時にも対応できるように設計されています。各ドアには展開式と引き出し式のステップが装備されています。これにより、路上乗降時や鉄道線のホームとの接続がスムーズに行えるよう配慮されています。

主な機器

台車は住友金属工業製のインダイレクトマウントで、台車枠はプレス鋼板製です。主電動機として三相誘導電動機が使用されており、VVVFインバータ制御方式を採用しているため、省エネ効果や運転のスムーズさが期待できました。

名鉄での運用と廃線

1997年に営業運転を開始し、当初から直通列車の増発を実現しました。2001年にはダイヤ改正が行われ、揖斐線内の一部区間が廃止される中、名鉄も運行全般の見直しを行いました。最終的に岐阜市内線・揖斐線が2005年3月31日に廃止され、モ780形は同日付で全て廃車されました。

豊橋鉄道への譲渡

名鉄岐阜市内線の廃止に伴い、モ780形は豊橋鉄道に譲渡されました。形式名は変わらないものの、各車両の長さは連結器の撤去により短くなりました。2005年8月2日から豊橋鉄道での営業運転が始まりましたが、名鉄時代とは異なる運用方式となっています。豊橋鉄道では全面広告が施された車両として運用され、2024年からは電子機器の更新も予定されています。

おわりに

名鉄モ780形電車は、岐阜市内線・揖斐線の利便性向上を目的に投入された新型車両であり、名鉄での活躍を経て豊橋鉄道に引き継がれました。廃線とともに譲渡されてもなお、地域に貢献する姿が見られることは、鉄道車両にとって一つの大きな意味を持つと思います。今後もその変遷を注視していきたいところです。

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