向山雅重

向山雅重：信州の民俗を掘り下げた郷土史家

向山雅重（むかいやま まさしげ）は、1904年7月6日に長野県上伊那郡宮田村で生まれ、1990年1月24日に生涯を閉じた、日本の郷土史家であり民俗学者です。彼は、地域の文化や歴史を深く探求し、その成果を広く社会に共有することに尽力しました。

教育者としての側面と民俗学への情熱

向山は、1921年から1963年までの長きにわたり、上伊那郡内の小・中学校で教員として教鞭を執りました。教育者としての活動と並行して、三沢勝衛、有賀喜左衛門、そして民俗学の大家である柳田国男に師事し、民俗学の研究に励みました。特に、柳田国男の影響を受け、「郷土人の郷土研究」という理念を実践し、地域に根差した民俗調査を精力的に行いました。長野県文化財専門委員も務め、地域の文化財保護にも貢献しました。

受賞歴と業績

向山の功績は数々の賞によって称えられています。1970年には、彼の代表作の一つである『信濃民俗記』が柳田賞を受賞し、その研究の質の高さが認められました。さらに、1986年には日本民俗学会の名誉会員となり、1987年には中日新聞社会功労賞を受賞、1989年には「信州伊那山村における民俗学的研究」で秩父宮記念学術賞を受賞するなど、その業績は多岐にわたります。

主要な著作

向山の著作は、地域文化や生活史を理解する上で重要な資料となっています。

『山村小記』正続（山村書院、1941-1943年、慶友社、1974年）
『山ぶどう』正続（宮田新聞社、1965-1967年）
『信濃民俗記』正続（慶友社、1968-1969年）
『日本の民俗 20　長野』（第一法規出版、1975年）
『伊那谷と災害』（北原技術事務所、1982年）
『伊那谷の風土と人』（北原技術事務所、1982年）
『伊那農村誌』（慶友社、1984年）
『山国の生活誌 信州伊那谷 向山雅重著作集』全5巻（新葉社、1987-1988年）
第1巻 (山国の衣食住)
第2巻 (山国の生業)
第3巻 (山国の家族)
第4巻 (山国の四季)
第5巻 (民俗研究六十年)
『伊那谷の民話集』（郷土出版社、1991年）
『伊那谷の民俗 向山雅重写真集』（新葉社、1992年）
『甦る山国の生活誌 わたしたちの暮らしを見直す知恵 (向山雅重著作集)』（新葉社、2002年）

これらの著作を通じて、向山は信州、特に伊那谷地方の歴史、風俗、生活様式を詳細に記録し、後世に伝えました。

向山雅重民俗資料館

向山の故郷である宮田村には、彼の業績を記念した「向山雅重民俗資料館」があり、彼が収集した民俗資料や研究成果が展示されています。この資料館は、地域文化の理解を深めるための貴重な場所となっています。

まとめ

向山雅重は、教育者としての顔を持つ一方で、生涯をかけて郷土の歴史と文化を研究した民俗学者でした。彼の研究は、地域文化の重要性を再認識させ、次世代への継承を促す上で重要な役割を果たしています。その情熱と功績は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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