吹雪 (ゴヤ)

吹雪 (The Snowstorm)

概要

『吹雪』もしくは『冬』は、スペインの著名なロマン主義画家フランシスコ・デ・ゴヤによって1786年に制作された風俗画である。この作品は油彩で描かれ、エル・パルド王宮のタペストリー装飾用に設計されたカルトンの一つであり、特に冬をテーマにした作品である。現在この絵はマドリードのプラド美術館に所蔵されており、別に制作された準備習作がアメリカのシカゴ美術館に収蔵されている。

制作の経緯

ゴヤは彼のキャリアの中で、6期にわたる63点のタペストリー用のカルトンを制作した。《吹雪》は1786年から1787年にかけて制作された《四季》連作の一部であり、エル・パルド王宮内の国王カルロス3世の会談室用の装飾として依頼された。彼は友人に宛てた手紙の中で、連作のための下絵を描いていることを明かしているが、王宮の特定の部屋を間違って記していた可能性もある。実際、この連作は王太子夫妻の食堂には適していなかった。この連作には合計13点が予定されていたが、現存するのは12点である。

作品の特徴

『吹雪』では、雪に覆われた厳しい風景を舞台に、5人の男たちが吹雪の中を歩いている様子が描かれている。男たちは着込んだ服で寒さをしのいでいるが、その表情は疲労感を隠すことができていない。特に画面中央の3人の農民が印象的で、彼らは食料の購入が失敗し、空腹の帰路についているのだ。最も後方にいる男は、鑑賞者を見つめており、その視線には何か訴えかけるものがある。男たちの服装はカスティーリャ地方とバレンシア地方のものであり、それぞれサモラの毛布で覆われている。前方には裕福な家の召使いらしき人物もおり、彼らの装いは明らかに貧しい農民たちとは対照的である。

この作品は冬の伝統的な描写を打破し、古典的な冬の寓意を避け、革新的なアプローチで冬を表現している。ゴヤが描く寒さや風は人物の姿勢や感情に反映されており、雪景色の美しさやその厳しさを一層強調している。特に背景に家屋を減らし、人物間の空間を多く取ることで、視覚的に広がりのある厳しい風景を創出している。

社会的テーマと変化

ゴヤはかつての楽しい景色や上流社会の人々を描くのではなく、辛苦に耐える農民や貧しい人々を描写することを選んだ。このリアリズムは、彼の作品に新しい視点を与え、当時の社会問題への意識を反映している。美術史家のホセ・マヌエル・アルナイスは、画面中央の男がゴヤの自画像であると主張しており、彼の意識が作品に込められていることを示唆している。

来歴

この作品はサンタ・バルバラ王立タペストリー工場で制作され、当初の目的地である王宮には展示されなかった。カーラス3世の死後、このカルトンは王立タペストリー工場に保管され、最終的にはプラド美術館に移されて収蔵された。現在、唯一『雄羊に乗った少年』のカルトンがシカゴ美術館に所蔵されている。

『吹雪』は、冬の厳しさと人々の苦しみを映し出した作品として、また社会的な視点を持つ絵画として、ゴヤの重要なキャリアの一部となっている。彼の技法やテーマは、時代を超えて今もなお多くの人々に影響を与え続けている。

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