呉座勇一

呉座勇一：日本中世史研究の第一人者

呉座勇一氏は、1980年生まれの日本の歴史学者で、日本中世史を専門としています。東京大学で文学博士号を取得後、研究者として数々の大学や研究機関に所属し、現在は国際日本文化研究センターの研究部助教として活躍しています。

学歴と研究歴

1999年に海城高等学校を卒業後、2003年に東京大学文学部を卒業。大学院に進学し、五味文彦氏や村井章介氏の指導を受け、日本史学研究室で中世史の研究に打ち込みました。修士課程在籍中から歴史学研究会日本中世史部会の運営委員を務め、2008年に東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得退学。

その後、日本学術振興会特別研究員として、東京大学史料編纂所で榎原雅治氏のもとで研究に従事。2011年には博士論文『日本中世の地域社会における集団統合原理の研究 ― 領主の一揆を中心として ―』を提出し、博士（文学）の学位を取得しました。

2012年からは東京大学大学院人文社会系研究科の教務補佐員、研究員を経て、2014年に東京大学大学院総合文化研究科の学術研究員に。2015年には国際日本文化研究センターの客員准教授となり、2016年からは同センターの助教として研究活動に専念しました。

研究テーマと業績

呉座氏の研究テーマは、日本中世の一揆や地域社会における集団統合原理の研究が中心です。特に、著書『一揆の原理』では、一揆を単なる反体制運動ではなく、共同体における連帯や相互扶助の側面から捉え、新たな視点を提供しました。

また、『応仁の乱 ― 戦国時代を生んだ大乱 ―』は、従来の歴史像を覆す画期的な著作として、ベストセラーになりました。この著書では、応仁の乱を当時の僧侶の視点から描き出し、戦乱の実態や社会構造を多角的に分析し、室町時代の社会に対する関心を高めました。この書籍は、書店新風賞特別賞を受賞しています。さらに、その後の研究で、『戦争の日本中世史』で角川財団学芸賞を受賞し、その学術的な業績は高く評価されています。

その他、『陰謀の日本中世史』では、日本史における様々な陰謀論を検証し、そのパターンを体系化しました。また、『戦国武将、虚像と実像』では、戦国武将のイメージがどのように形成されてきたかを分析するなど、幅広いテーマで研究を行っています。

社会活動と発信

呉座氏は、研究活動だけでなく、社会への発信にも積極的に取り組んでいます。講談社学習まんが『日本の歴史』では、平安後期から応仁の乱までの監修を担当し、歴史をわかりやすく伝えることに貢献しました。また、テレビ番組やラジオにも出演し、歴史の面白さや重要性を一般の人々に広めています。

さらに、2019年には信州大学の教育研究に対する貢献が評価され、紺綬褒章を受章。NHK『英雄たちの選択』にも出演し、歴史解説者としても活躍しています。2024年には、弥助問題についてインタビューに応じたり、見解を発信し、歴史に対する多角的な視点を提供しています。

研究への姿勢

呉座氏の講演やインタビューでは、「自分にとって都合の良い情報を疑ってかかり、自分の手で通説を確認してみることが大事」と述べています。また、「歴史に限らず「唯一絶対の正解があり、そこに必ずたどり着ける」と考える人は多いが、現在の複雑な社会で、簡単に結論の出る問題はない。」とも語っています。

その研究姿勢は、歴史的事実を客観的に捉え、多角的な視点から分析することを重視しています。歴史を単なる過去の出来事としてではなく、現代社会を理解するための重要な手がかりと捉え、歴史学の可能性を広げる活動を続けています。

主要な著書

『一揆の原理 ― 日本中世の一揆から現代のSNSまで ―』
『戦争の日本中世史―「下剋上」は本当にあったのか』
『応仁の乱 ― 戦国時代を生んだ大乱 ―』
『陰謀の日本中世史』
『頼朝と義時 ― 武家政権の誕生 ―』
『戦国武将、虚像と実像』
『武士とは何か』
『動乱の日本戦国史 ― 桶狭間の戦いから関ヶ原の戦いまで ―』

呉座氏は、その卓越した研究成果と社会への貢献により、現代日本を代表する歴史学者の一人として、今後ますますの活躍が期待されています。

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