呉棠

呉棠（ご とう、Wú Táng、1813年 - 1876年）は、清朝末期の官僚であり、字は仲宣と称しました。彼は安徽省明光県の出身です。

1845年に科挙に合格し、挙人の位を得ました。その後、江蘇省の桃源県や清河県の知県を歴任し、地方官としてその手腕を発揮しました。当時、山東省から侵入してきた捻軍に対し、郷勇を率いて果敢に撃退し、その勇名を轟かせました。

1853年には、太平天国軍が揚州を陥落させるという未曽有の事態が発生しました。呉棠はこれに対し、数万の郷勇を組織し、近隣諸県の防衛にあたりました。彼は、持ち前のリーダーシップと戦略眼を活かし、太平天国軍の侵攻を食い止めました。

1860年、呉棠は淮徐道に任命され、長江の北で団練を組織し、度重なる捻軍との戦いで勝利を収めました。この功績が認められ、1861年には江寧布政使と漕運総督に抜擢され、長江北部の食糧補給を統括する重責を担いました。この間、漕運総督府が置かれていた清江浦を修築し、捻軍からの防衛に成功するなど、その才覚を遺憾なく発揮しました。

1865年には両広総督に任命されましたが、捻軍への対処が急務であったため、実際には就任せず、引き続き漕運総督の職務を全うしました。翌1866年、呉棠は閩浙総督に異動となり、新たな地でその手腕を振るうことになります。

1867年、四川総督に任命された呉棠は、貴州省におけるミャオ族の反乱鎮圧に尽力しました。1871年からは成都将軍を兼任し、四川省全体の軍政を掌握しました。総督として、民力の休養と飢民の救済に力を注ぎ、民政の安定にも大きく貢献しました。彼は、その卓越した行政能力と民衆への深い愛情により、多くの人々の信頼を集めました。

1875年、呉棠は病のため辞任し、その生涯を終えました。死後、その功績を称えられ、「勤恵」の諡号が贈られました。

呉棠は、激動の清末において、軍事と行政の両面で卓越した才能を発揮した人物でした。太平天国の乱や捻軍の反乱という国家の危機に際し、郷勇を率いて果敢に戦い、また、地方官としてもその手腕を発揮し、民政の安定に貢献しました。その功績は、清朝末期の歴史において特筆されるべきものです。

呉棠は、単なる武人ではなく、民衆を愛し、民の幸福を願った人物でした。その姿勢は、現代においても、リーダーのあるべき姿を示すものとして、深く記憶されるべきでしょう。

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