閩浙総督

閩浙総督について

閩浙総督（びんせつそうとく、満洲語：ᡶ᠋ᡠᡤᡳᠶᠠᠨᠵᡝᡤᡳᠶᠠᠩ ᠨᡳᡠᡥᡝᡵᡳ ᡴᠠᡩ᠋ᠠᠯᠠᡵᠠᠠᠮᠪᠠᠨ、転写：fugiyan jegiyang ni uheri kadalara amban）は、清朝の地方官職の一つであり、現在の福建省と浙江省を管轄しました。この官職は、両省における軍事と行政の両方を統括する重要な役割を担っていました。

沿革

閩浙総督の歴史は、清朝初期の地方行政制度の変遷と密接に関わっています。その成立と変遷は以下の通りです。

1645年（順治2年）： 福建総督が設置され、総督府は福州に置かれ、浙江省も管轄下に置かれました。これが閩浙総督の原型となります。
1648年（順治5年）： 浙閩総督と改称され、総督府は衢州に移されました。
1658年（順治15年）： 両省にそれぞれ総督が設置され、福建総督府は漳州に、浙江総督府は温州に設置されました。これにより、一時的に両省は別々の総督により統治されることになります。
1672年（康熙11年）： 福建総督府は福州に戻されました。翌年には浙江総督府が廃止され、福建総督が浙江省の一部も管轄するようになります。
1687年（康熙26年）： 福建総督が福建浙江総督に改称され、再び両省を管轄する体制となります。
1727年（雍正5年）： 特例として李衛が浙江総督に任命され、福建浙江總督の高其倬は福建総督として福建省の専任となりました。この時期は、両省が一時的に分離されました。
1734年（雍正12年）： 再び浙江総督は廃止され、福建省と浙江省は浙閩総督の管轄下に戻りました。
1736年（乾隆元年）： 李衛の例に倣い、嵆曽筠が浙江総督に任命されました。浙閩総督の郝玉麟は福建省の専任となりました。これも一時的な分離です。
1738年（乾隆3年）： 嵆曽筠が中央に異動になったため、再び郝玉麟が両省を管轄するようになり、以降は福建省と浙江省を統括する閩浙総督の体制が確立しました。
1885年（光緒11年）： 福建巡撫が廃止され、閩浙総督がその職務を兼任するようになりました。これにより、閩浙総督の権限はさらに強化されました。

この変遷を通じて、閩浙総督の役割は、単なる地方行政官ではなく、両省の軍事、民生、財政を総合的に管理する非常に重要な地位であることがわかります。

歴代総督

以下に、閩浙総督の歴代総督について、時期ごとに分けてまとめます。

福建総督～浙閩総督期 (1645～1658年)
この時期は、福建総督が浙江省も管轄していた時期です。総督府の所在地は福州または衢州でした。

福建総督・浙江総督 分離期 (1658～1688年)
この時期は、福建省と浙江省がそれぞれ別の総督によって統治されていた時期です。福建総督府は漳州、浙江総督府は温州にありました。

福建浙江総督期 (1688～1727年)
この時期は、福建浙江総督が両省を統括していました。

雍正帝治世の福建総督・浙江総督 分離期 (1727～1734年)
雍正帝の治世中、一時的に両省が分離され、それぞれの総督が置かれました。

福建浙江総督期 (1734～1736年)
再び両省が統合され、福建浙江総督が両省を管轄しました。

乾隆帝治世の福建総督・浙江総督 分離期 (1736～1738年)
乾隆帝の治世中にも一時的に両省が分離されました。

閩浙総督期 (1738～1912年)
この時期は、両省を統括する閩浙総督の体制が確立され、清朝末期まで続きました。

まとめ

閩浙総督は、清朝の地方行政制度において重要な役割を果たした官職であり、その変遷は清朝の地方統治政策の歴史を反映しています。福建省と浙江省という重要な地域を管轄し、軍事、民生、財政の面で大きな権限を持っていました。その存在は、清朝の統治機構を理解する上で不可欠な要素です。

参考資料

『清史稿』巻一百十六・志九十一『職官三外官』
* 『清史稿』本紀／列伝

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