両広総督

両広総督：清朝における華南統治の要

両広総督（りょうこうそうとく）は、清朝時代に広東省と広西省を管轄した地方長官の役職です。満洲語では「guwangdung guwangsi uheri kadalara amban」と表記されます。

職務と権限

両広総督は、管轄地域における軍政と民政の両方を統括する強大な権限を持っていました。特に、外国貿易港として重要な広州を抱えていたため、対外関係に関する事務を扱うことが多く、その役割は非常に重要でした。19世紀には、アヘン密輸による銀の流出を防ぐという困難な課題にも直面しました。

アヘン戦争（1840年）やアロー戦争（1856年）では、広州が主戦場となり、外国との衝突が頻発しました。こうした事態に対応するため、1844年には、それまで臨時の役職であった欽差大臣（外国との交渉を担当する全権大使）が全国に先駆けて常設され、両広総督が兼任することになりました。

歴史

両広総督の前身は、順治元年（1644年）に設置された広東総督です。当初、総督府は広州に置かれ、広東省と広西省を管轄していました。

順治12年（1655年）：総督府を広西省の梧州に移転。
康熙2年（1663年）：広東総督と広西総督が分割され、総督府は再び広州へ。
康熙3年（1664年）：広西総督が廃止され、広西省も広東総督の管轄下に戻り、広東総督府は広東省肇慶府に移転。
雍正元年（1723年）：再び広東総督と広西総督が分割されるも、雍正2年に再統合。
雍正7年（1729年）：ミャオ族の反乱鎮圧のため、広西省が雲貴総督の管轄下に編入。
雍正12年（1734年）：広西省が再び広東総督の管轄となり、称号が両広総督に改称。
乾隆11年（1746年）：両広総督府を広州に移転。
乾隆22年（1757年）：ヨーロッパ商人との貿易を広州に限定する広東貿易体制（広東システム）が開始。
道光22年（1842年）：南京条約締結により、両広総督と英国香港総督との対等な交渉が認められる。
光緒31年（1905年）：両広総督が広東巡撫を兼任するようになる。

総督府の所在地

1746年以降、両広総督府は広州に置かれていました。しかし、アロー戦争中の1857年に英仏連合軍によって広州が占領された際、総督府の建物は破壊されてしまいました。その跡地には、1888年に石室聖心教堂が建設されています。

歴代総督

歴代の総督は、清朝の歴史において重要な役割を果たしました。以下に、主な総督の名前を記載します。

佟養甲（トン・ヤンジア）
李率泰（リ・シュタイ）
王国光（ワン・グオグアン）
李栖鳳（リ・チーフォン）
盧興祖（ロ・シンズー）
周有徳（シュウ・ヨウダ）
金光祖（ジン・グアンズー）
呉興祚（ウー・シンツオ）
石琳（シー・リン）
郭世隆（グオ・シーロン）
趙弘燦（ジャオ・ホンツァン）
楊琳（ヤン・リン）
孔毓珣（コン・ユシュン）
郝玉麟（ハオ・ユーリン）
オミダ（鄂弥達）
マルタイ（馬爾泰）
ナストゥ（那蘇図）
ツェレン（策楞）
イェンギシャン（尹継善）
ショセ（碩色）
陳大受（チェン・ダーショウ）
アリグン（阿里袞）
バンディ（班第）
楊応琚（ヤン・インジュ）
鶴年（ホニャン）
陳弘謀（チェン・ホンモウ）
李侍堯（リ・シーヤオ）
蘇昌（スチャン）
楊廷璋（ヤン・ティンジャン）
楊景素（ヤン・ジンスー）
桂林（グイリン）
バヤンサン（巴延三）
シュチャン（舒常）
フレフン（富勒渾）
孫士毅（ソン・シーイー）
フカンガン（福康安）
長麟（チャンリン）
朱圭（ジュ・グイ）
吉慶（ギキン）
フトゥリ（瑚図礼）
ウェシブ（倭什布）
ナヤンチェン（那彦成）
呉熊光（ウー・ションガン）
ヨンボー（永保）
百齢（ベリン）
松筠（スンユン）
蒋攸銛（ジャン・ヨウシェン）
阮元（ルアン・ユアン）
李鴻賓（リ・ホンビン）
盧坤（ル・クン）
鄧廷楨（ドン・ティンジェン）
林則徐（リン・ゼシュ）
怡良（イリャン）
キシャン（琦善）
祁𡎴
耆英（キイン）
徐広縉（シュー・グアンジン）
葉名琛（イエ・ミンチェン）
黄宗漢（ホアン・ゾンハン）
王慶雲（ワン・チンユン）
労崇光（ラオ・チョングアン）
劉長佑（リュウ・チャンヨウ）
晏端書（イェン・ドゥアンシュー）
毛鴻賓（マオ・ホンビン）
呉棠（ウー・タン）
瑞麟（ルイリン）
英翰（インハン）
劉坤一（リュウ・クンイー）
裕寛（ユクワン）
張樹声（ジャン・シューション）
曽国荃（ツェン・グオチュアン）
張之洞（ジャン・ジードン）
李瀚章（リ・ハンジャン）
譚鍾麟（タン・ジョンリン）
徳寿（デシェウ）
李鴻章（リ・ホンジャン）
鹿伝霖（ルー・チュアンリン）
陶模（タオ・モー）
岑春煊（ツェン・チュンシュエン）
周馥（ジョウ・フー）
張人駿（ジャン・レンジュン）
袁樹勲（ユアン・シュシュン）
増祺（ヅェンキ）
張鳴岐（ジャン・ミンチー）
* 李準（リ・ジュン）

まとめ

両広総督は、清朝の華南地域における政治、経済、軍事を統括する重要な役職でした。特に、外国貿易との関係が深く、アヘン戦争やアロー戦争といった歴史的な出来事にも深く関わっています。歴代の総督たちは、それぞれの時代において、清朝の安定と発展に貢献しました。

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