呉王僚

呉王僚（ごおう りょう）

呉王僚は、中国春秋時代の呉の第5代の王です。姓は姫、諱は僚または州于。青銅器「王子吁戈」の銘文では、名は詨、字は吁と記されています。

生涯

王位相続の経緯

呉王僚の父は、初代の王である寿夢です。寿夢には4人の嫡子がおり、特に四男の季札の器量を高く評価し、王位を譲りたいと考えていました。しかし、寿夢は具体的な対策を講じないまま亡くなります。

寿夢の死後、兄たちは父の意向を尊重し、季札に王位を継ぐよう勧めました。しかし、季札は兄を差し置いて王位を継ぐのは不敬であるとして固辞しました。そのため、長兄の諸樊が王位を継ぎ、その死後は弟たちが順に王位を継承していくことになりました。これは、最終的に季札が王位を継ぐようにするための措置でした。

諸樊、余祭と王位が引き継がれ、余昧の死後、季札は再び王位を固辞したため、僚が王位を継承しました。

しかし、この王位継承に不満を抱く者がいました。それは、長兄である諸樊の子、公子光（後の闔閭）です。彼は、寿夢の意向で王位継承の順序が変わったものの、余昧の死後、季札が王位を固辞した時点で、王位継承権は長兄の子である自分に戻るべきだと考えていました。そのため、僚に従う理由はないと考えていました。

楚との対立

呉王僚2年（紀元前525年）、呉の勢力拡大のため、公子光（闔閭）を派遣して楚を攻め、これを打ち破りました。また、人材の招聘にも熱心で、楚の平王と費無忌によって父の伍奢と兄の伍尚を殺され、亡命してきた伍子胥を迎え入れたのも僚の時代です。

呉王僚4年（紀元前523年）には、14年前に余昧の治世に楚の霊王によって捕虜にされ、抑留生活を送っていた弟の蹶由が帰国しました。

呉王僚8年（紀元前519年）、呉と楚の国境の村で、桑の葉を巡る子供同士の喧嘩が、国家間の戦争に発展する事件が起こります。呉の村が楚によって滅ぼされたことを知った僚は激怒し、国境の居巣と鍾離を攻め落としました。

さらに州来まで進撃したため、楚も武将の蔿越を派遣して迎え撃ちました。この時、公子光は「楚の属国は小国ばかりで、楚を恐れて従っているだけです。戦いは武力で制すると聞きます。まずは属国の胡と沈を攻めれば、楚は混乱するでしょう」と進言しました。

僚はこの進言を採用し、自ら軍を率いて胡と沈を攻撃し、これを撃破しました。こうして呉は勢いに乗り、楚を圧倒しました。

呉王僚11年（紀元前516年）、楚では平王が亡くなり、幼い末子の昭王が即位しました。これを聞いた僚は、公子掩余と公子燭庸に国軍を預けて国境にある六を攻めさせましたが、楚軍の反撃を受けて孤立しました。また、季札を晋などに派遣し、中原諸国の動向を探らせました。

暗殺

呉軍が孤立したことを知った公子光は、クーデターを計画しました。呉王僚12年（紀元前515年）夏4月、光は僚を宴会に招待しました。僚は光との不仲を承知していましたが、光との確執を外敵に知らしめることを避けるため、護衛を厳重にして出席しました。

しかし、光は伍子胥の推挙による食客である専諸を刺客として雇い、「魚腸剣」と呼ばれる暗殺用の剣を授けていました。宴席で専諸は料理人に扮し、魚の中に隠した魚腸剣で僚を刺殺しました。僚は即死し、光は王位を奪い、闔閭と名乗ることになります。

僚の死後、公子掩余は徐（舒）に、公子燭庸は鍾吾に逃亡しました。闔閭は、専諸の功績を称え、その子を卿に任命しました。

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