告朔

告朔（こうさく、こくさく）についての詳細

告朔とは、中国、朝鮮、日本などで行われていた重要な朝廷の儀式であり、特に毎月の新月の日（朔日）にその月の出来事の開始を告げるものでした。この儀式は古代において重要な意味を持ち、月の始まりを知ることで多くの行事や活動の準備が進められることができました。

中国における告朔の起源

告朔の原義は「朔を告げる」というもので、古代中国では太陽太陰暦が用いられていました。毎月の朔日を知らせることにより、その月に実施されるさまざまな行事の起点を示す意味を持ちました。実際、告朔は多くの社会的活動や国家の儀式の基盤となるものであり、非常に重要視されていました。

この儀式は古くから行われており、特に『論語』には、孔子と彼の弟子である子貢がこの儀式について論じている記録があります。孔子が活躍していた魯の国では、もともと君主が見守る中で告朔の儀式が行われていましたが、文公の時代になると君主の出席はなくなり、儀式は生贄の羊を供える形式に変わりました。孔子は弟子である子貢が羊の供物を止めるべきだと主張したのに対し、儀式の重要性を認識し、羊の供えが行われる限り告朔の意義は残ると反論しました。

日本における告朔

日本では、中国の告朔の儀式を取り入れつつ、その内容が変化していきました。日本の告朔は、有位の文武官人が毎月1日に朝廷に集まり、前月の公文書を天皇に進奏するという形式で行われました。この際、天皇はその資料を閲覧し、前年の活動を確認しました。この儀式は「視告朔」とも呼ばれています。

757年に施行された『養老令』では、告朔の際に官人が特定の衣服を着用することが義務付けられていました。その後、『令集解』の記述によれば、内舎人が朝廷内に置かれた公文の草案を天皇に奏上する形で進められていたようです。この儀式は、もともとは官人の仕事の成果を天皇が確認するためのものでしたが、次第に形式的な儀式として変化していきました。

告朔の儀式は、決して単なる行事ではなく、国家の運営や社会の動きに深く根ざしたものであり、その影響は今なお日本の多くの行事や文化に息づいています。この古代の儀式は、月の始まりを告げるだけでなく、長い歴史の中で見られる世代を超えた文化の受け継がれを象徴しています。

参考文献

• - 吉川幸次郎 (1978). 論語・上. 朝日文庫.
• - 岸俊男 (1985). “朝堂政治のはじまり”. 日本の古代7 まつりごとの展開. 中央公論社.
• - 古瀬奈津子 (1984). “宮の構造と政務運営法 : 内裏・朝堂院分離に関する一考察”. 史学雑誌 93 (7).

関連項目

• - 朝廷
• - 朝庭
• - 朝堂
• - 朝政
• - 朝儀
• - 公文
• - 律令制

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