周深

周深（しゅうしん、Charlie Zhou）は、1992年 9月29日生まれの中国の男性歌手です。彼の独特な歌声と卓越した表現力は、幅広い世代から支持されています。

湖南省邵陽市に生まれ、幼少期に貴州省貴陽市へ移り育ちました。高校卒業後、一度はウクライナで歯科医学を学びますが、音楽への道を志し、リヴィウ音楽院でベルカント唱法を専門的に学びました。このクラシック音楽の基礎が、後に彼の多様な歌唱スタイルを支えることになります。

音楽キャリアの始まりとブレイク

音楽活動の原点は、2010年に動画共有サイトYY.comで「卡布叻」名義で歌唱動画の投稿を始めたことにあります。そして2014年、人気オーディション番組『中国好声音』に出場したことで、その才能が広く知られるようになりました。ブラインドオーディションでの歌唱は審査員を魅了し、出場者の一人である李維とのデュエット曲『バイカル湖畔』は同番組の年間金曲賞を受賞。番組出演後、ライブツアーなどにも参加しました。

2015年には李維とカバーアルバム『回味』をリリース。さらにソロ活動も開始し、初のシングル『玫瑰与小鹿』を発表して新人アーティスト賞を受賞するなど、キャリアを着実に築いていきます。

『大魚』の成功と認知度の向上

2016年、周深の名を世に知らしめる決定的な楽曲が生まれます。アニメ映画『紅き大魚の伝説』のイメージソング『大魚』です。この楽曲は圧倒的なヒットとなり、多くの音楽賞に輝く彼の代表曲となりました。同年には覆面歌唱番組への出演なども話題を呼び、その唯一無二の歌声は広く認知されるようになりました。

2017年には、テレビドラマやアニメーション作品の主題歌・エンディングテーマを多数担当し、『大魚』は年間チャートを賑わせ続けました。そして11月、高暁松プロデュースによる初の公式アルバム『深的深』をリリースし、アーティストとしての地位を確立しました。

ツアーの開始と国際的な評価

2018年は、自身初となる全国コンサートツアー「深空间」を成功させ、ライブアーティストとしても存在感を示しました。アカデミー賞受賞作『シェイプ・オブ・ウォーター』中国版プロモーションソングを担当するなど、活動の幅を広げました。音楽賞でも最優秀アーティストなどに選ばれ、その実力と人気が改めて証明されました。特に、クラシックやミュージカルの楽曲を披露したリアリティー番組『声入人心』への出演は、彼のベルカント唱法に裏打ちされた高い歌唱力と幅広い表現力が再評価されるきっかけとなり、新たなファン層を獲得しました。

2019年からはセカンドツアー「C-929 星球」を開始。テレビドラマの楽曲歌唱や、他のアーティストとの合同コンサート、チャリティーイベントへの参加など、精力的に活動を展開しました。この年、フォーブス30アンダー30に選出され、さらに11月にはMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードで最優秀中国＆香港アクト賞を受賞するなど、国際的な評価も揺るぎないものとなりました。

『歌手』での伝説的パフォーマンスと飛躍

2020年、周深は人気音楽番組『歌手』に出演し、キャリアにおける最大のハイライトの一つを迎えます。特にボーカロイド曲『達拉崩吧』を一人で複数のキャラクターを演じ分ける圧巻のパフォーマンスで披露し、大きな話題を呼び、番組で優勝を勝ち取りました。このパフォーマンス動画はインターネット上で爆発的に拡散され、記録的な再生回数とダウンロード数を記録。音楽評論家からも高く評価され、周深の多面的な才能を示す象徴的な出来事となりました。この年の活躍は、音楽チャートや様々な授賞式で主要な賞を多数獲得したことにも表れています。また、オンラインライブ「晚安明天见」では720万人以上が視聴するなど、パンデミック禍における新しい形式での活動でも成功を収めました。

多様な活動と影響力

音楽活動に加え、2020年以降はバラエティ番組への出演が飛躍的に増加。音楽番組での共演や、文化体験、旅行系のリアリティ番組など、様々なジャンルでその親しみやすいキャラクターを発揮し、国民的な知名度を確立しました。プロモーション活動や多数の人気バラエティ番組へのゲスト出演もこなし、エンターテイナーとして幅広い分野で活躍しています。

また、故郷である貴陽市の文化観光推進大使に就任するなど、社会的な貢献も行っています。2021年には、中国最大の年越し番組『春節聯歓晩会』（春晩）に初出演し、その歌唱は国内外で絶賛されました。

2022年にはポケモン25周年記念ソングの中国語版を担当し、日本向けにも公開されるなど、その影響力は国境を越えて広がっています。

周深は、クラシックで培った確かな歌唱技術と、多様な声色を使い分ける唯一無二の表現力、そしてジャンルにとらわれない音楽性で、常にリスナーを魅了し続けています。歌手として、そしてエンターテイナーとして、今後のさらなる活躍が期待されています。

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