周達生

周 達生

周 達生（しゅう たっせい、1931年5月6日 - 2014年5月4日）は、日本で活動した在日中国人の民族学者、文化人類学者です。国立民族学博物館において長年研究・教育に携わり、名誉教授の称号を授与されました。専門は動物生態学および物質文化論で、特にアジア地域の食文化や人間と動物の関係性を文化人類学的な視点から探求した独自の業績で知られています。

生涯

1931年、兵庫県神戸市に生まれました。旧制の神戸第一中学校、神戸高等学校を経て、甲南大学文理学部理学科で学びました。大学卒業後、京都大学理学部動物行動学研究室で研究員として勤務し、動物生態学に関する基礎的な素養を培いました。

1979年には、当時の国立民族学博物館長であった梅棹忠夫氏の誘いを受け、同博物館の研究員として着任しました。以後、民族学博物館を拠点に研究活動を展開し、助教授、教授へと昇任しました。また、総合研究大学院大学の教授も兼任し、後進の育成にも尽力しました。

1995年3月末日をもって国立民族学博物館を定年退職し、名誉教授の称号が贈られました。同年4月からは1年間、関西学院大学総合政策学部の教授としても教鞭をとりました。

2014年5月4日午前8時10分、肺炎のため、居住地であった神戸市中央区の病院で息を引き取りました。享年82歳でした。

研究活動と業績

周達生氏の研究は、動物生態学の知見を基盤としつつ、人間の文化活動や日常生活に深く関わる物質文化論、特に食文化や民族動物学といった分野に大きな足跡を残しました。アジア各地の食習慣や、人間と動物が織りなす文化的な関係性について、フィールドワークに基づいた緻密な観察と、独自の切り口から分析を行いました。

氏の著作は多岐にわたり、お茶の文化史や中国の食文化といった特定のテーマを深く掘り下げた研究書から、民族動物学に関する論考、さらには身近な事柄に学術的な光を当てたエッセイ風の著作まで含まれます。例えば、『お茶の文化誌』や『中国の食文化』ではアジアの食文化の多様性と歴史的背景を、『民族動物学ノート』では人間と動物の関わりの文化的側面を考察しました。また、『あれも食べたこれも食べた』や『昭和なつかし博物学』といった著作からは、氏の好奇心の旺盛さと、日常や「雑学」の中に潜む文化や科学へのユニークな視点がうかがえます。これらの著作を通じて、専門分野の知見を広く一般に紹介し、多くの読者に民族学や文化人類学への関心を喚起しました。

主な著作

『お茶の文化誌―その民族学的研究―』（福武書店）
『中国の食文化』（創元社）
『民族動物学ノート』（福武書店）
『東アジアの食文化探検』（三省堂選書・三省堂）
『民族動物学ノート―アジアのフィールドから―』（東京大学出版会）
『文化としての食と旅』（清水書院）
『あれも食べたこれも食べた―雑学の雑学』（中央公論新社）
『カエルを釣る、カエルを食べる―両生類の雑学ノート―』（平凡社新書・平凡社）
『昭和なつかし博物学－「そういえばあったね！」を探検する－』（平凡社新書・平凡社）
『梅棹さんのサギシラズ―「キング」で学び、百均で探る』（のじきく文庫･神戸新聞総合出版センター）

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