呪符

呪符とは：文字と記号が織りなす神秘の力

呪符（じゅふ）とは、道教に端を発するお守りの一種であり、文字や記号を組み合わせた札、またはそこに記された文字や記号そのものを指します。一種のおまじないとして、台湾や中国大陸の道教信者の間で用いられ、未来を占ったり、災厄を祓ったりする目的で使用されてきました。医療が発達していなかった時代には、病気治療の手段としても用いられるなど、幅広い役割を担っていました。

呪符の歴史

呪符の起源は古く、最古のものは「五岳真経図」や「八会之書」であると言われています。漢代の墓から出土した呪符は、延光元年（122年）と年代が判明しており、現存する最古の呪符とされています。「五岳真経図」は、東西南北中央の五つの山の形を示す霊図で構成され、それぞれが四季と土用を表しています。

呪符は、府礼や文習としても広く用いられ、中国では戦国時代から唐代にかけて盛んに使用されました。竹を割って作った竹簡に由来するとされ、清代には徐々に廃れていきましたが、信仰者たちは無意識のうちにも使用し続けました。

『後漢書』には、黄帝や太上老君が薬の一部として呪符を使用していたという記述があり、道教が確立される以前から呪符が存在していたことが伺えます。中国においては、霊符など同じ動きを持つものすべてを呪物の一種と捉え、紙だけでなく、石、竹、木、縄、特定の魚なども呪符として用いられました。日本の正月飾りである門松や注連縄、神社で授与されるお札なども、これらの呪物の一種と考えることができます。

霊符は、中国古代の敬天崇地思想に由来すると考えられています。天を敬い、地を崇拝する思想は、自然を尊ぶ考え方であり、古代中国の人々は自然現象を神格化して祭祀するようになりました。道教の起源もこの敬天崇地思想にあり、霊符の素となったと考えられます。道教の霊符には、日月星や山岳、河川、風雨、雷電などを象徴する図形が多く見られます。

霊符に関する最も古い文献上の記録は、後漢・霊帝の光和年間（178年 - 184年）の『三国志』に見られます。張角が始めた太平道で、霊符を使って病人を治したという記述があり、霊符が古くから人々の生活に根ざしていたことが分かります。

日本での出土例では、7世紀前半の大阪市桑津遺跡のものが最も古いとされています。南北朝時代に記された『拾芥抄』には、疫病が流行した際に使う呪符として「蘇民将来子孫也」という文字を記したものが挙げられており、その由来は『備後国風土記』であるとされています。

呪符の種類

呪符は、主に以下の3種類に分類できます。

字符: 文字の組み合わせで構成された霊符。最も一般的なタイプです。
図符: 図形のみで構成された霊符。「真形図」とも呼ばれますが、図形自体が文字を変化させたものである場合が多いです。
字図符: 神様の肖像と符文を組み合わせた霊符。古代中国の墳墓から多く発見されています。

前漢以前の呪符には、符薬、符信、竹使符、虎符、使符などがあります。

鎮宅霊符は、家内安全を保つために用いられ、道教の道士たちが技法を発展させ、五方角に貼るなどの方法を編み出しました。一般的には、各戸の正庁に貼られることが多いです。

呪符の効用

呪符は、以下のような効用があると信じられています。

辟邪: 外部からの魔障を防ぎ、身を守る。
降神: 神を降臨させ、力を借りる。
悪鬼退散: 悪鬼を裁き、妖邪を鎮める。
病気治療: 病気を治療し、健康を保つ。
開運招福: 災いを取り除き、幸福を招く。

ただし、呪符の効果を得るためには、以下の点に注意する必要があります。

丁寧に扱う: 呪符を粗末に扱ったり、踏んだりしない。
他人に見せない: 呪符の霊的パワーを損なわないために、他人に見せない。
定期的に交換する: 神社などで授与するお札と同様に、1年ごとに新しいものに交換する。
適切な処分: 古くなった呪符は、浄火で焼くか、清い山中等に埋める。

呪符の使用法

呪符は、その種類や目的に応じて様々な方法で使用されます。

貼懸符法: 霊符を門柱や室内に貼る。
洗拭符法: 霊符を焼いて灰にし、身体に塗る。
呑服符法: 霊符を呑み込む。
佩帯符法: 霊符を身につけて携帯する。
埋投符法: 霊符を土に埋めたり、河水に投じたりする。
直接符法: 霊符を直接、手や足の裏に書いたり、体の病幹部に書写する。
焚焼符法: 符を焼く。

これらの使用法は、熟練した道士の指導のもとで行うことが推奨されます。

道教以外の呪符

呪符は、道教だけでなく、陰陽道、神道、密教、修験道など、様々な宗教や信仰体系においても用いられています。

陰陽道系: 陰陽道の原理に基づいた呪符。日本を代表する呪符の一つ。
神道系: 神社や神道系の宗教団体から頒布されるお守りやお札。
密教系: 真言密教や天台密教に由来する呪符。梵字や諸仏、諸天などが描かれている。
* 修験道系: 山岳信仰に基づく修験道で作られる呪符。

西洋では、悪魔や病気を防ぐためのお守りとしてアミュレットが、災難や病気から守るためにタリスマンが用いられています。

呪符は、古くから人々の生活に寄り添い、様々な願いを叶えるための道具として用いられてきました。その神秘的な力は、現代においても多くの人々を魅了し続けています。

もう一度検索