呼び戻し

呼び戻し

呼び戻しは、相撲の決まり手の一つで、相手の力を利用して倒す技です。「仏壇返し」とも呼ばれ、この名称を使用する力士もいます。英語では "Pulling body slam" と表現されます。

概要

四つに組んだ状態から、相手の差し手を強引に引っ張り込み、その反動を利用して相手の体を浮かせ、素早く差し手を返して突き出しながら、引っ張った方向にひねり倒すのが特徴です。この技は、力と技術が求められ、滅多に決まらないため、「幻の決まり手」とも呼ばれています。

「揺り戻し」や「寄り戻し」とも呼ばれていましたが、1960年1月に決まり手が70手に整理された際、「呼び戻し」に統一されました。現在でも82手の中に残っています。

歴史

第22代横綱太刀山、戦後では関脇玉乃海、第45代横綱若乃花などが得意としていました。特に太刀山の呼び戻しは、人形の絡繰りに例えられ「仏壇返し」と呼ばれました。太刀山の猛突っ張りをかいくぐって廻しを取ること自体が難しいことでしたが、関脇綾浪は廻しを取ってこらえたことが仇となり、太刀山の仏壇返しの餌食となり、腰骨を痛めるほどだったと言われています。玉乃海は1952年9月場所から1959年7月場所まで10回記録し、若乃花は1953年5月場所から1962年1月場所まで19回を記録しました。第58代横綱千代の富士も不完全ながら何度か使用しています。若乃花や千代の富士は力士としては小柄でありながら、卓越した技術と強靭な足腰によってこの技を可能にしていました。

平成時代に入ってからは、1993年9月場所で関脇貴ノ浪が前頭4枚目寺尾戦で勝利し、決まり手が「呼び戻し」と発表されましたが、「突き落としではないか」との声も上がりました。1997年3月場所では、横綱貴乃花が前頭5枚目剣晃に対し明らかな「呼び戻し」で勝利し、話題となりました。近年では、2013年9月場所で横綱白鵬が前頭3枚目宝富士に対して16年ぶりに「呼び戻し」を決めています。

令和に入ってからは、2023年11月場所で三段目の清の花が序二段の爆羅騎に対して決めています。

「仏壇返し」の由来

太刀山が活躍した当時、歌舞伎「東海道四谷怪談」の一場面で、悪役が仏壇にもたれかかり仰向けにひっくり返る場面があり、名古屋の芝居小屋で仏壇をひっくり返す舞台装置が評判となりました。このイメージが太刀山の豪快な決まり手と合致したことから、「仏壇返し」と呼ばれるようになりました。

「呼び返し」

「呼び戻し」に似た決まり手として、「呼び返し」という記録があります。この決まり手は以下の取組で記録されています。

昭和32年3月場所3日目 ○太刀風－白龍山×
昭和33年3月場所4日目 ○太刀風－七ッ海×

ただし、「呼び返し」が「呼び戻し」の別名や誤植なのか、別の技なのかは定かではありません。

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