和気貞臣

和気貞臣（わけのさだおみ）は、平安時代初期に活躍した貴族であり、その生涯は学問と官吏としての職務に彩られています。播磨守・和気仲世の三男として生まれ、幼くして母を亡くしますが、その悲しみは定められた礼の基準を超えるほど深く、叔父である和気真綱を大いに嘆かせたと言われています。

若くして治部卿・安倍吉人に師事し、老荘の教えを学びました。その後、大学に入学し、学問に励み、承和8年（841年）には文章得業生に選ばれます。これは、文章の才能を認められた証であり、彼の学識の高さを示すものです。しかし、承和10年（843年）に対策を受験した際には、残念ながら合格には至りませんでした。

その後、承和14年（847年）に大学大允に任じられ、嘉祥元年（848年）には大内記という重要な役職に就任します。大内記は、朝廷の文書作成や記録を司る役職であり、文章力に優れた人物が選ばれることが一般的でした。仁寿元年（851年）には従五位下に叙せられ、貴族としての地位を確立しました。しかし、仁寿3年（853年）に疱瘡を患い、37歳という若さで亡くなっています。

和気貞臣は、聡明で鋭敏な人物であった一方で、質素で飾り気のない性格でした。また、非常に雷を恐れていたという逸話も残っています。彼は、些細な技能には関心を示さず、囲碁のみを愛好しており、対局に熱中すると、時間が経つのも忘れてしまうほどでした。好敵手との対局では、夜遅くまで勝負を続けたという話は、彼の囲碁への情熱を物語っています。

官歴としては、『続日本後紀』に以下の記録が残っています。

時期不詳：正七位上
承和8年（841年）3月7日：文章得業生
時期不詳：正六位下
承和10年（843年）5月15日：対策不第
承和14年（847年）：大学大允
嘉祥元年（848年）：大内記
時期不詳：正六位上
仁寿元年（851年）11月26日：従五位下
仁寿3年（853年）4月14日：卒去（大内記従五位下）


彼の短い生涯は、学問への情熱と官吏としての責任感に満ちていました。また、囲碁を愛する一面や雷を恐れるという人間味あふれるエピソードは、彼の人物像をより深く理解する上で重要な要素となっています。

参考文献
森田悌『続日本後紀』（上下巻）、講談社〈講談社学術文庫〉、2010年

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