文章得業生

文章得業生（もんじょうとくごうしょう）

文章得業生とは、古代日本の律令制度下の大学における特別な学生区分であり、将来の官僚を育成するための重要な役割を担っていました。

概要

文章得業生は、大学に在籍する文章生の中から、特に学業成績が優秀な者が選抜された特待生的な存在です。この制度は、天平2年（730年）に太政官の奏上によって設けられました。定員は2名と限られており、文章生、または給料学生の中から選ばれました。省試の合格者から選ばれることもありました。

文章得業生は、選抜されてから一定期間（7年、5年、または3年）を経ると、官吏登用試験の最高峰である秀才試（方略試・対策）の受験資格を得ることができました。秀才試に合格することで、当時の官僚として最も早く京官に任じられる道が開かれました。そのため、大学の教官や特定の専門官職を目指す者にとって、文章得業生を経ることは有力な手段でした。世襲の教官よりも採用枠は広いものの、その人数は限られていました。

平安時代中期までは、文章得業生が必ずしも対策を受験せずに、地方官などに任用されるケースもありました。

弘仁11年（820年）には、文章生の採用基準が見直され、良家の子弟が優先的に採用されるようになりました。この改革に伴い、文章得業生2名の代わりに、俊士5人と秀才生2人が新たに設置されました。しかし、天長4年（827年）には元の制度が復活し、文章得業生の制度も再開されました。この制度変更によって、文章生の試験を行う主体が大学寮から式部省へと移管され、文章生の地位が向上しました。

このように、文章得業生は、古代日本の官僚制度において、学業優秀な人材を発掘し、育成するための重要な役割を果たしていました。

参考文献

『国史大辞典』第四巻p165 - p166「紀伝道」、文：桃裕行、吉川弘文館、1983年
和田英松 『新訂 官職要解』 所功校訂ｐ93 - p94、講談社学術文庫、1983年

関連項目

紀伝道
文章博士
擬文章生
得業生

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